特集 人と動物の共通感染症・2 BSEを中心に
BSEの全頭検査をめぐる検証
小澤 義博
1
1国際獣疫事務局(OIE)
pp.857-860
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100497
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BSEの歴史的背景
BSEがイギリスで牛の新しい病気として認められたのは,1986年であった.当初イギリスは,「BSEは羊のスクレイピー同様,牛の肉も臓器も食べて安全である」と主張していたが,1996年になってイギリス政府およびWHOは,「BSEは人に感染して変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)を起こす」と公表したため,BSE対策の主体は“牛から牛への対策”から,“牛から人への感染防止対策”へと大きく変わってゆくことになった.
その間イギリスでの研究が進み,1988年までにBSEは肉骨粉などの動物性蛋白を含む飼料を牛に与えることによって起こることがわかり,飼料対策に重点が置かれた.また,感染した牛の体内でのBSEプリオンの分布状態も,マウスを使った検査で1989年までにある程度明らかにされ,脳,脊髄,脾臓,胸腺,扁桃,腸などを指定危険臓器と称して,人の食用としての使用が禁止され始めた1).しかし多くの消費者は,BSEは人には感染しない病気と思い込んでしまっていたので,1995年まではBSE対策の主体は肉骨粉の牛への使用の禁止に集中していた.したがって指定臓器の食用が完全に禁止されたのは,1996年以後のことである.
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