特集 人と動物の共通感染症・2 BSEを中心に
わが国のBSE対策への提言
山内 一也
1,2
1東京大学
2(財)日本生物科学研究所
pp.852-856
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100496
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2001年9月にBSEの発生が確認されてから約1年が経った.これまでに総合的なBSE対策が実施され,食の安全に関する消費者の信頼は回復してきた.しかし,BSE対策の科学的基礎となるべきBSEの発病機構,診断法,ヒトへの感染にかかわる要因など,不明な点が多く残っている.本稿では,筆者に与えられた課題の「提言」というより,BSE対策をめぐる最近の議論について,科学的な面からの私見を述べてみることにしたい.
プリオン病をめぐる名称の混乱
BSEは,海綿状変性を特徴とするウシの中枢神経系の変性疾患である.同じグループに属する病気としてヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeld-Jakob disease: CJD),ヒツジのスクレイピーなどがあり,これらの病原体はかつてはスローウイルスと呼ばれていたが,現在では通常の微生物とは異なり,蛋白のみから成るプリオンと考えられている.そこで,これらの病気はプリオン病と総称されるようになった.
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