特集 人と動物の共通感染症・2 BSEを中心に
BSE対策は成功したのか
小野寺 節
1
1東京大学大学院農学生命科学研究科応用免疫学教室
pp.848-851
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100495
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過去20年間に,日本経済は発展し,遠く離れた地域に対しても,世界中に無数の連絡網を形成した.それほど昔でなくても,日本の気候では,バナナやオレンジは稀なご馳走であった.しかし今では,近くのスーパーへ行けば,世界中から飛行機や船で運ばれたそれらの食品を安価で手に入れることができる.アボカドやオレンジはカリフォルニアから,マンゴ,ドリアンは東南アジアから運ばれる.日本のような豊かな国の消費者は,いつでもそれらの必要な物を,必要な時に買うことができる.しかしながら,それらの人々は,地域上の輸送網が,数限りない病原体の輸送網になっていることに気がつかない.地球の裏側の欧州から,大量の肉骨粉が輸入され,日本のBSEの原因となっている.また汚染した大根の種や冷凍牛肉が米国から輸出され,日本や韓国で問題を起こしている1).
文明は,人々を新たな病原体にさらしている.一方で明らかに文化・教育の進歩により,新たな病原体は抑えられている.医学,有効な都市計画,保健教育が病気の拡大を抑える効果をもたらしている.しかしながら,地球上すべての地域から病原体を撲滅することは不可能である.すべてのヒト・動物は,微生物と共存していると考えられるからである.したがって,人々は科学的手段を用いて,これらの病原体と平和的共存を目指す他はない.
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