特別寄稿
「環境病」への新しい研究視角―医学的に説明できない症候群の環境要因の解明に向けて
水野 玲子
1,2
1こどもの体と環境を考える会
2カネミ油症被害者支援センター
pp.544-547
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100425
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「環境病」(Environmental Illness: EL)という言葉が聞かれるようになった.それは,疲労,頭痛,集中力低下,筋肉痛,胸痛,不眠など多器官,多症状に悩まされる健康被害の総称である.大気や水など生活環境の化学物質により引き起こされる症状群として“20世紀アレルギー”1),“化学エイズ”2)などと呼ばれることもある.現在米国では,人口の約6%が医師からELあるいは化学物質過敏症(Multiple Chemical Sensitivities: MCS)と診断されているという3).医学コミュニティの中では正式に認知されていないが,わが国でも化学物質によって身体的,精神的に不健康な生活を強いられている人が増加しており,関心が高まりつつある.
化学物質による健康被害は,かねてより水俣病を始めとする“公害”が大きな社会問題となってきた.だが今日,われわれは何千という化学物質に微量ながら同時にさらされており,従来の“公害”のように単一化学物質による影響,という単純な因果関係図式が当てはまらない事例が増えてきた.しかも,われわれが化学物質に暴露される仕方が慢性的かつ超低レベルであるという点においても,急性毒性や比較的大量の暴露を問題としてきた従来の毒性学や産業医学では,新事態に対応できなくなってきた.
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