特別寄稿
科学的根拠とリスク評価
緒方 裕光
1
1国立保健医療科学院研究情報センター
pp.540-543
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100424
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われわれの身の周りには,意識しているか否かにかかわらず,人間の健康を脅かす様々な要因(健康リスク要因)が存在している.これらの要因が社会に及ぼす影響は年々多様化の傾向にあり,その影響が及ぶ範囲も拡大化しつつある.近年の健康リスクに関する問題の多くは,特定の地域に限定されるものではなく,人間社会全体の問題として認識されるべきものである.このような健康リスクに対して適切に対処するためには,リスクに関する科学的分析や客観的情報が必要となってくる.特に公的政策においては,より合理的な根拠が求められることは言うまでもない.
リスク評価は,リスクへの対応とその科学的根拠を繋ぐ役割を持っており,その過程は客観的な方法に従っている.しかし,科学的情報からリスク評価を経て現実の意思決定に至るまでの経路には多くの要素が複雑に関係する上に,各段階で必ず不確実性を伴っている.このような問題に対して科学的なアプローチを行うことは,公衆衛生学上大きなテーマの1つであると言えよう.
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