連載 21世紀の主役たち・1【新連載】
馬の世話をするイラリオ(ペルー・アンデス,ケロ村)
関野 吉晴
1
1武蔵野美術大学
pp.245
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100285
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イラリオはすでに学齢期になっていたが,学校に行っていない.小さい頃からブタ,ヒツジ,アルパカ,リャマといろいろな家畜の面倒を見てきた.今は馬も乗りこなすようになり,馬の世話を始めた.身長が低いので,首にロープをかけるのにひと苦労する.誰も手伝ってくれないので,自分1人でやるしかない.家族で馬が必要ない時は山の上に放し飼いにしておく.長い間放置しておいて,必要になって探しに行くと見つからない時がある.どうしても自分1人で見つけられない時は,父や兄の手を借りなければならない.最近は家畜泥棒も増えてきた.農繁期には家族総出で畑仕事をするので,イラリオも駆り出される.
イラリオは時々馬を連れて,学校の近くまで行く.そして授業の様子を眺めていることがある.学校では朝,ペルー国歌を歌う.イラリオは何度も聞いているうちに,おおよそ国歌をそらんじるようになっていた.
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