特集 「健康格差社会」とセーフティネット
ホームレス生活者に対する健康支援
黒田 研二
1
1大阪府立大学人間社会学部
pp.92-95
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100233
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2002(平成14)年8月に施行された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」に基づき,2003年1~2月にホームレスに対する全国規模の実態調査1)が行われた.調査では都市公園,河川,道路,駅舎その他の施設を起居の場所として日常生活を営んでいるホームレス者の人数を把握すると同時に,約2,000人を対象に面接による生活実態調査が実施された.その結果,ホームレスの平均年齢は55.9歳,50歳以上64歳以下の年齢層が2/3を占めていた.生活している場所が定まっている者が84.1%で,生活場所としては,「公園」が48.9%,「河川敷」が17.5%.直近のホームレスになってからの期間は,「1年未満」が30.7%,「1年以上3年未満」が25.6%,「3年以上5年未満」が19.7%.5年未満の者を合計すると,全体で76.0%であった.
現在の身体の具合を尋ねた結果,具合の悪いところがあると回答した者は47.4%で,そのうち,何も対応していない者が68.4%であった.訴えの中では「腰痛」(23.6%)が最も多く,疾患としては「高血圧」(12.0%)が最も多かった.身体不調を訴える者は5割弱,そのうち治療を受けていない者は7割弱という数字は,ホームレス者に対する保健・医療の確保の必要性を強く示している.ホームレスに陥った理由に「病気・けが・高齢で仕事ができなくなった」を挙げる人が2割弱あり,健康状態の悪化は,ホームレスという状態に陥る要因のひとつとなっている.
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