視点
大都市の結核の新たな問題点
吉田 道彦
1
1東京都福祉保健局健康安全部感染症対策課
pp.88-89
発行日 2012年2月15日
Published Date 2012/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102341
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はじめに
わが国の結核罹患率は漸減を続け,2010年全国の結核患者数は23,261人,罹患率(人口10万対)は18.2と,前年に比べ4.2%の減少であり,既に罹患率10を切る地域が出現するなど,低蔓延化への移行が進みつつある1).一方,全国的な問題として高齢者,結核発病危険因子を有する者,社会経済弱者,大都市への偏在化が顕著であり,その程度には地域格差があると言われている2).このうち,高齢者の結核は70歳以上が51.2%を占め,患者数も多く,その対策は多くの自治体で共通の課題となっている1).
近年,75歳未満の罹患率は急速に減少する一方,85歳以上の低下が緩慢で65~69歳の4倍に達するなど,超高齢化が顕著となっているが,また,典型的な症状を欠くことから,診断の遅れがあり,認知症や身体機能の低下に加え,合併症や同居家族の高齢化などから介護と連携した服薬支援体制の強化が重要とされる3).一方,大都市部では高齢者に加え生活困窮者や外国籍患者が集積し,実際に一部の都市では高い罹患率の理由として社会経済弱者の集積が挙げられている4).さらに東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県からなる東京圏では罹患率の高い自治体が集中しており,これまで生活困窮者や外国籍などの集積が主な原因とされていたが,その実態はよくわかっていなかった.
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