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はじめに
1. HIV感染予防対策推進における自発的HIV検査相談事業の重要性
1981年にエイズ(後天性免疫不全症候群)患者が米国で初めて報告されて以来,日本において実施されてきたHIV予防対策は,①開始導入期,②エイズ予防法(後天性免疫不全症候群の予防に関する法律)期,③感染症新法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律:平成11年施行)期,という3期に大別できる.①,②期においては,HIV/AIDSに対する差別・偏見対策が前面に立った社会予防的観点,言うなれば「管理」から対策が開始され,基盤が整備された.次いで③期に入った今日では,HIV感染はHAART(=highly active antiretroviral therapy)の普及等により,もはやすでに死に至る病ではなく,慢性性感染症の一つとして位置づけられるようになり,人権の尊重や感染早期発見・発症予防手段の出現を背景として,個人が主体となって行う予防行動を,専門家等が「支援」する法的体系が整えられたと言える.
検査相談施策は,検査相談サービスの利用者にとってカウンセリングや医療への架け橋となる等,さまざまなケアや支援につながる入り口(gateway)となる点からも,重要なHIV感染予防施策1)と位置づけられている.現在,保健所等を拠点に全国提供される自発的HIV検査・相談(=以下「HIV-VCT: Voluntary counseling and testing」)事業の提供窓口は,2003年10月現在,653か所設置済みである.しかしながら,HIV感染者・AIDS発症患者とも増加しているにもかかわらず,検査総数は1996年以降横ばいと報告されており2),また新規AIDS患者の80%は感染を知らなかった(2000年)3)との指摘から,HIV-VCT推進策が求められている.
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