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とうとう研修医がやってきた
とうとうわが保健所にも研修医がやってきた.医師は所長1人という保健所に,研修医と言えども同職種が来るのである.うれしくない訳がない.本音を言うと,大部分はうれしいが,保健所に研修医を迎えるのは初めての体験なので,ちょっとだけanxiousだった.なにしろ全人的医療ができる医師を育てるという目標の「地域保健・医療」研修である.私が臨床医だった時代には大勢の研修医が大学病院にいるのは当たり前で,周囲には大勢の仲間の医師がいた.指導医が1人だけの保健所で日常業務をこなしながら,うまく研修を指導できるだろうか.そういうときに威力を発揮するのが,石川中央保健所川島ひろ子所長が書いた,本シリーズ1~4(本誌69巻6~9号)である.まだお読みでない方は是非ご一読いただきたい.また,同保健所のホームページに研修医による研修後の感想が載っているので,お読みいただきたい.
私は「全人的医療,公衆衛生マインド,公衆衛生と医療の接点,医療を外から見せる」と,研修が始まる前から職員に何度も唱えてきた.「公衆衛生マインドを持ち,衛生法規をよく理解して実践し,生活者としての地域住民や患者の心がよくわかり,保健・医療・福祉の連携において地域のリーダーになれる医師」になってもらうために,何をどのように研修してもらうか,職員もそれぞれ考えてくれた.そして,その視点での研修が始まった.
開始後,すでによい影響が双方に芽生えているように思う.研修医は公衆衛生,衛生法規,そして保健所の仕事を理解しようとひたむきに研修している.職員も自ら勉強し,医師に必要な視点を考えながら対応してくれている.人に何かを教えようとすれば,その何倍も勉強せざるを得ないのである.職員もこれまで法規という,ある意味では一見狭い出入り口に見えていた医療と保健所との関係が,実は間口が広いものだという感覚を持ち始めている.所長はいつも職員に唱えるとよい.「全人的医療,公衆衛生マインド,公衆衛生と医療の接点,医療を外から見せる」と.
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