連載 海外レポート ニューヨーク州保健省の日常・10
健康危機の管理対策
ホスラー 晃子
1,2
Akiko S. Hosler
1,2
1ニューヨーク州保健省慢性病疫学課
2ニューヨーク州立大学公衆衛生大学院
pp.758-760
発行日 2000年10月15日
Published Date 2000/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902388
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日本ではこの数年の間に,阪神淡路大震災,地下鉄サリン事件,O 157集団食中毒,ウラン加工施設の臨界事故など,世界的に報道された健康危機の事例が相継ぎ,危機管理の問題は本誌でも特集された.ニューヨーク州はその点,長い間特に目立った事件も起こらず,平穏無事と構えていたのだが,実は1年前あたりから,にわかに大きな健康危機問題がいくつか浮上しはじめた.その皮切りは,昨年8月末に,州東北部に位置する,ワシントン郡の移動遊園地で起こったO 157による集団食中毒事件である.この事件では幼児と老人の2名の死者を出した他,2,000人近い人々が激しい下痢症状を起こすという,全米でもまれに見ぬ規模の事件へと発展した.これまでのアメリカでのO 157による食中毒のほとんどは,熱処理が徹底されていない肉類の摂取によるものだったため,ワシントン郡の場合も,当初はハンバーガーやホットドッグなどに焦点が当てられた.しかし患者の聞き込み調査の結果,食べ物ではなく,飲み物が関係していることがわかり,さらに移動遊園地を実地調査したところ,敷地内にある数カ所の井戸のうち,水の消毒処理装置がついていない井戸がいくつかあったことが判明した.
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