連載 グローバリゼーションと健康・3
グローバリゼーションと貧困
Ichiro Kawachi
1
Ichiro Kawachi
1
1Professor of Social Epidemiology, Harvard School of Public Health, Boston, USA
1Professor of Social Epidemiology, Harvard School of Public Health, Boston, USA
pp.226-230
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100052
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人々の生活に及ぼすグローバリゼーションの影響について盛んに議論されている.貧困と不平等の世界的な動向について,グローバリゼーションに反対する人々と賛成する人々が,一見したところ,相反する主張をしているように思われることがしばしばある.しかし,その根拠を仔細に検討してみると,双方とも真実の一部のみを語っていることがわかる.極端な貧困(1日1ドル以下)で生活している人々の数が過去20年間で劇的に減少してきた一方で,世界の各地域で貧困の削減に極端なばらつきが見られている.多くの国々,ことにサハラ以南のアフリカ諸国では,貧困者数の実質的増加が見られた.国内にとどまらず,国家間の所得の不平等もまた増加してきた.貧しい国で生活している人々が人間的な発達を遂げる見込みを改善する上で決定的な鍵を握っているのは,豊かな国々からの援助であろう.本稿では貧困の削減が地球的公益であることを述べる.
グローバリゼーションの影響
グローバリゼーションは世界の人々の生活を改善するための有益な力なのだろうか?それとも人々の健康にとって脅威なのだろうか?この疑問は学術誌,マスメディア,あるいはインターネット上でしばしば議論されている.それは時には,たとえばシアトルやジェノバといった都市での暴動となったこともある.グローバリゼーションに関する議論は,事実や問題点を知らない人にとって理解しがたいものである.グローバリゼーションを支持する専門家と支持しない専門家は,双方ともグローバリゼーションの影響について一見相反する主張をしている.貧困に及ぼすグローバリゼーションの影響がその一例である.
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