連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・13
―SARS制圧までの道③―SARS制圧対策の作成と,「渡航延期勧告」
尾身 茂
1
1WHO西太平洋地域事務局
pp.260-261
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100069
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前回は,SARSの診断基準の作成と,その顚末について話したが,今回は制圧対策の作成と,WHOが香港等に発効した「渡航延期勧告」について裏話も含めて話そう.
WHOの対策本部が,ハノイ,シンガポール,トロントにおける感染例の臨床的・疫学的な分析を行った結果,典型的症状や潜伏期間などが徐々に明らかになってきたが,とりわけ,以下の2つの所見が戦略の作成上重要だった.
①感染経路は,飛沫等による濃厚接触による感染がほとんどで,空気感染の可能性は少ないこと.
②感染者の他の人への感染は,発熱,呼吸器症状などが出現してから起こること.
この2つの所見から,われわれは,
①感染者と接触した者の積極的な追跡調査を行い,潜伏期間の間,自宅隔離をしてモニタリングを行うこと.
②発症した場合には直ちに病院で厳重な管理を行うこと.
以上を医療機関とコミュニティにおける対策の要とした.
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