連載 Health for All―尾身茂WHOをゆく・12
―SARS制圧までの道②―緊急対策本部発動
尾身 茂
1
1WHO西太平洋地域事務局
pp.172-173
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100050
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病原体不明,数日で世界各地に伝播し,さらに多くの医療関係者が倒れ,有効な治療法もないという異常事態に対応するため,直ちにWHO西太平洋地域事務局内に緊急対策本部が設置された.今回から数回にわたり,この対策本部の活動について述べよう.
緊急対策本部は,WHO西太平洋地域事務局の正規スタッフが核となり(写真),さらに日本を含め,各国からの感染症専門家が緊急動員された.対策本部では,シンガポール,ベトナム,香港などの当局関係者と,連日,電話による合同の戦術会議がもたれた.また,1日1,000通を超えるE-mailによる情報提供の分析を行うなど,文字通り,夜を日に継いでの闘いが始まった.集まる情報は,政府や公的機関からのものもあれば,一般市民から提供されたものもあったが,1つたりとも有益な情報を逃すまいと,“うわさ”の真偽の程を追跡調査する“ルーマーサーベイランス”までも行った.対策本部は,そうした緊迫感の中で,まず,①病気の診断基準の作成,②SARS制圧に向けた戦略の決定を行った.
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