調査報告
保健所保健師が取り組んだ自殺未遂者支援事業の評価
坂井 真優
1
,
福田 光
2
,
森原 千秋
3
,
藤田 玲子
1
,
千葉 佐和江
1
,
東久保 ちあき
4
1前 広島県東部厚生環境事務所・保健所福山支所保健課
2広島県東部厚生環境事務所・保健所
3広島県東部厚生環境事務所・保健所福山支所保健課
4広島県健康福祉局健康危機管理課
pp.222-228
発行日 2025年6月10日
Published Date 2025/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134883330810030222
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緒言
わが国の自殺者数は減少傾向にあるものの、依然として年間2万人を超える水準で推移している1)。特に、自殺未遂者は自殺企図を繰り返し最終的に自殺死亡に至る可能性が高いことから2)、再企図防止は自殺対策において効果的である。自殺未遂者の多くは救急搬送されても身体的治療が優先で、根本的な問題が解決しないまま地域に戻ることが多い。そのため、複合的な問題の解決には支援機関が連携しながら地域で継続的に支援していくことが重要である。自殺総合対策大綱3)では自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐことが重点施策とされ、医療と地域の連携推進による包括的な自殺未遂者支援の強化を図ることが明記されている。
近年、自殺未遂者支援は全国の自治体で取り組まれており、広島県では第3次広島県自殺対策推進計画4)で重点施策に掲げている。A圏域でも2019(令和元)年12月から保健師が中心となり、医療機関等と連携して「A地域いのち支える相談支援事業」(以下、本事業)を行っている。しかし、公衆衛生の現場における自殺未遂者の支援について、望ましい介入や、効果の指標に関する方法論が確立しておらず5)、本事業について振り返りや効果検証が十分にできていない。
そこで、本研究は保健師が取り組んだ支援と事業の効果について明らかにすることを目的とした。事業の実践から効果が得られた背景を考察し、今後のあり方を検討することで、県内の他圏域においても自殺未遂者支援の取り組みを広げる一助となることが期待される。

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