看護人間学のための論理療法入門・1
プロローグ—ある大学生の自殺未遂
伊藤 順康
1
1東京理科大学
pp.564-567
発行日 1987年9月25日
Published Date 1987/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908421
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論理療法とはなにか
最初に論理療法というもののイメージについて述べておきたい.
われわれが行動を決定していくにあたって,その羅針盤となる信条や信念,価値観や考え方には実にさまざまのものがある.たとえば‘看護婦になりたいので自分は看護学校へ行かねばならない’‘看護婦になれなければ自分の人生はもうダメだ’という2つの考え方をくらべてみよう.前者は,事実に基づいているから合理的,論理的思考である.この考え方には何ら問題はない.しかし後者の考え方はそうではない.看護婦になりたいのはよいとして,しかし,看護婦になれなければ自分の人生はもうダメだ,という思考はどうであろうか.看護婦になれなければ本当に人生はダメなのだろうか.他の職業や職種を改めて選んで,頑張って生きていく道は絶対に不可能だろうか.看護婦を志してなれなかったとしたら,それはダメな人間の証明になってしまうのだろうか.人間は一つの道でうまくいかなければ,他の道では生きていけないのだろうか.
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