連載 農福連携と作業療法・第3回【最終回】
農福連携は地域づくりであり地域包括ケアシステムの一つの手段である
公文 一也
1
Kazuya Kumon
1
1芸西病院
pp.1470-1474
発行日 2025年12月15日
Published Date 2025/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590131470
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はじめに
前号1)では,農福連携の本質と継続の課題について,事例を通じて報告した.農福連携とは単に農業と福祉が連携するだけではなく,生きづらさを抱えた方たちの特性が農業という作業とマッチングすることで,当事者,農家,支援者,そして地域全体が活性化するということを述べた.また,筆者がかかわり,農福連携で就労する方々の中には,農業を通じて体調が整い,元気を回復して他の一般就労に転職する方が約30人存在することも報告した.
本号では,この農福連携がどのように地域づくりへと発展し,最終的に地域包括ケアシステムの一つの手段となったかについて報告する.安芸福祉保健所管内における自殺予防の取り組みから始まった多機関連携が,「誰もが暮らしやすい地域を目指して」という理念のもと,さまざまな生きづらさを抱える人々への包括的支援体制へと発展した経緯を詳述する.
この取り組みの根底にあるのは,前号で述べた「連携とは相手を思いやること」という理念である.会議を実施することでも,話を聞くことでも,他機関に依存することでもない.相手の役割を理解し,顔の見える関係を構築し,相手を思いやることで,効果的なネットワークが構築される.継続的な活動が可能な理由は,「何とかなる,そこに行けば何とかなる」という希望が,農業や福祉にかかわるすべての人々に共有されているからである.生きづらさのある人が救済されるという希望,人とのつながりが可能性を生み出すという希望が存在し,一人の喜びが複数人の喜びに波及していく.
今回は,この農福連携がいかに地域づくりの手段として機能し,地域包括ケアシステムの構築に寄与したかを報告する.

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