連載 農福連携と作業療法・第1回【新連載】
自殺対策と多職種連携から始まった農福連携
公文 一也
1
Kazuya Kumon
1
1芸西病院
pp.1215-1219
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590111215
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はじめに
筆者は,高知県庁に作業療法士として26年間勤務し,主に職務は精神保健福祉を担当していた.現在は高知県を退職し,2025年(令和7年)4月より高知県東部の安芸郡芸西村にある医療法人おくら会芸西病院に勤務している.本稿では高知県庁時代に在籍した高知県安芸福祉保健所で担当した地域連携による自殺予防と農福連携の取り組みについて述べる.
自殺予防は,困難な事例へ向き合う周囲の対応能力を高める包括的な対策でもある.自殺は複数の問題が複合的に重なり合い,人間が最終的に選択する手段である.原因が多岐にわたる自殺の予防に携わるため,地域のさまざまな機関や住民が連携することで,互いに支え合う地域づくりや農福連携へと発展した.
筆者は,2012年(平成24年)に安芸福祉保健所に配属となった.2011年(平成23年)時点での高知県の自殺死亡率は人口10万人当たり26.0(全国22.9)で,全国第8位と高い水準で推移していた.福祉保健所圏域を比較すると,安芸福祉保健所圏域は42.3で他の圏域と比べて最も高い状況であり,自殺対策が急務となっていた.この自殺死亡率を下げるために「ここから東部地域ネットワーク会議(自殺予防ネットワーク)」を立ち上げた.「ここから」とは「こころとからだ」という意味である.会議内容は,各関係機関が連携して顔の見える関係となることが必要であったため,各機関の業務内容を理解することと,自殺予防の必要性について学習することとした.農福連携は,このネットワークから生まれた副産物の取り組みである.

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