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はじめに
わが国において特別支援教育が制度化されたのは2007年(平成19年)である.2027年には20年目を迎える.この20年で確実に特別支援教育の利用者は増えており,教育内容もますます充実してきていることを,実際の現場で支援に当たっている立場としては体感しているところである.この間,特別支援教育の現場では多職種連携が推進されており,教育の充実や,専門性の向上のために,教員以外にもさまざまな立場の,さまざまな職種註1)と協業を行ってきている.
作業療法士も長年にわたる協業の実績がある.特別支援教育が開始になった2007年より前から協業は行われていたが,さらに年々増えてきており,多様になっている.「学校作業療法」という名称も一般に使用されるようになってきており,学校現場と作業療法の協業がどんどん進んでいるところである.
一方,学校教育・特別支援教育に関心があり,かかわってみたいが,どのようにかかわることができるのか,どんな制度的な背景があるのか,教えてほしいという声も少なくない.そこで本稿では,学校にかかわる作業療法士の日本における制度的な現状を紹介し,本領域に関心をもつ読者の参考となることを目的とする.
1つ注意してほしいことがある.「制度」として紹介するものではあるが,本稿で紹介する制度がすべての地域で実装されているとは限らず,各自が所属する地域の実態把握が必要だという点である.教育の制度なので,特に義務教育段階にあっては,全国一律に展開されるイメージがあるかもしれない.しかし,教育行政は特に地方自治体ごとの創意工夫が認められるかたちになっており,自治体ごとの取り組みの差が大きいという現状もある.したがって,ある地域で行われていることが全国のどの地域でも確実に行われているわけではない,という点のみご理解いただきたい.換言すると,自治体で決断があれば,他の地域では実践されていない独自の工夫が実行可能なのである註2).

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