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インクルーシブ社会のすべては「いのち」を考えるところから
就学・就労支援の目的や実践は幅広い.そして,それらを考えるうえで,そもそもの社会との関連や社会が内包する“ややこしさ”を欠かすことはできない.元来,社会には,疾患や機能障害を原因として,孤独・孤立や困窮に陥りやすい脅威が存在し,加えて,さまざまな「決めつけ」のバリアが生じることで,自分に合った人や環境と出会う機会を得づらくなる傾向も少なくない.その結果,さらに社会(学校や職場等)からの分断が進むことで,より深い孤独・孤立や困窮に陥りながら社会の脅威にさらされ続けてしまう.だからこそ見つめるべき最優先は「いのち」であり,一人ひとりのいのちを大切にし,希望と尊厳のある人生を目指す社会づくりが必要なのである.
また,いのちを肉体に限らず,一人ひとりの暮らし(自然や風土や他者との関係と,その循環)から捉えると,「そもそも人はどのようなときに生きたくなるのか?」,「何が生きる理由になるのか?」という問いに向き合わなければならない.人は,なぜ,共に学ぶのか,共に働くのか,交流するのか,健康でいられるように努めるのか.病気や障害が重いということと社会で働き暮らす機会を得られないことはまったくの別問題であるという理解を,いかに持ち得るのか.そして社会は,何のために,時間と労力を循環させながら経済を営んでいくのか.また,物理的に住む所と働く所と学ぶ所が分けられ,孤立が生まれやすい構造となったのはなぜなのか.誰もが社会的,情緒的つながりと経済の循環の中に身を置いて生き続けるために,個と公との間にあるいのちを認め合うことが,排除されることのない社会の実現につながるともいえよう.

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