増刊号 就学・就労支援
第2部 まなぶ:就学
第5章 地域における子ども支援—地域マネジメントの視点から
1 インクルーシブ社会に向けた地域での子ども支援の実際
芳村 潔政
1
Kiyomasa Yoshimura
1
1特定非営利活動法人UNiSON キノコにじいろクラブ
pp.850-853
発行日 2025年7月20日
Published Date 2025/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091513540590080850
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キノコにじいろクラブ始動
私たちの歩みは,2019年(令和元年)5月に「キノコにじいろクラブ」が発足したことから始まりました.立ち上げ時の保護者説明会の参加申し込みは当初2名でしたが,徐々に増え,最終的には約10名の保護者が説明会に参加してくれました.説明会後の見学時には遊具もなく,あるのは音楽療法士の妻がもっていた楽器と,走り回れる空間のみでした.そうした中で私たちは,どのようにアプローチすればよいか悩みながら,子どもたちとのかかわりを築いていきました.
たとえば,外に飛び出し,声をかけても遠くまで走って行ってしまう男の子がいました.職員(当時4名)と連携しながら車を走らせ,その子に追いついてドライブをする.そんな療育が初期のころの日課でした.その男の子がなぜ外に飛び出すのか? 他の事業所のスタッフには「この子は走り回ることで脳に地図を描いている」と,母親はいつもなだめられていたようです.しかし,現実的には毎日がスリルの連続で,私たちはその原因や対処法を突き止めたいと,日々学びを深めていきました.私たちにできるのは,彼の求めている感覚や刺激を探求し,それを満たすために必要な遊具を揃えること.結果的に彼のおかげで室内遊具が充実し,現在でもさまざまな子へ対応できる十分な空間が確保されました.

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