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編集後記
白谷 智子
pp.1512
発行日 2025年12月15日
Published Date 2025/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091505520590121512
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最近,テレビや雑誌などの健康情報で「慢性炎症」というキーワードをよく耳にするようになりました.慢性炎症は老化や日々の生活習慣の乱れなどが原因で体内にくすぶり続ける微細な火種のようなもので,知らず知らずのうちにさまざまな病気を引き起こす土台をつくってしまうと言われています.自分の健康を考えると少し不安になるかもしれませんが,理学療法士として患者さんの健康と向き合う私たちにとって,この「サイレントキラー」とも呼ばれる慢性炎症の病態を深く理解することは避けて通れません.ぜひこの機会に,私たち自身の知識を最新情報にアップデートし,日々の臨床に活かしていきましょう!
本特集「慢性炎症と運動療法」では,慢性炎症がかかわる主要な疾患と運動によるその制御可能性を多角的に掘り下げています.血管老化や心不全における炎症による病態進行を概説し,有酸素運動やレジスタンストレーニングの確実な抗炎症効果を示しました.また,サルコペニアなどの筋疾患や変形性関節症の病態では,細胞老化や力学的負荷による炎症制御の重要性が強調されています.さらに,大腸がんや子宮体部がんなどのがん予防における運動の確実なエビデンスも紹介しています.本特集は,運動が細胞・分子レベルから全身機能まで幅広い抗炎症作用をもつことを明確に示しており,理学療法士が個別化された運動療法を通して,疾患の管理・予防においてきわめて重要な役割を果たすことを提言します.

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