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はじめに
本邦は世界の先頭に立つ超高齢社会であり,骨粗鬆症を背景とした脊椎疾患の罹患率は増加の一途を辿っている.そのため,骨粗鬆症性椎体骨折(osteoporotic vertebral fracture:OVF)や骨量・骨質低下を伴う脊椎変性疾患に対する手術療法の重要性は年々高まっている.手術療法の中でも特に脊椎インストゥルメンテーション手術は臨床上避けることのできない手段である一方で,脆弱な脊椎での固定性低下やスクリューの緩み,隣接椎体骨折などの問題を伴いやすく,その安全性・有効性確保が重要な課題となっている.本来可動性を有する脊柱と固定された脊椎インプラントとの間に生じる力学的不均衡をいかに臨床的問題として顕在化させないかは,脊椎外科医にとって常に直面するテーマである.
OVFの治療戦略としては,骨折椎体の安定化・骨癒合,日常生活動作の維持,脊柱アライメントの保持,骨粗鬆症治療の継続という多面的アプローチが求められる11).しかし,骨癒合までに時間を要する高齢者および超高齢者の場合は,疼痛の持続により活動性低下や廃用症候群を招きやすく早期離床が困難となる.このような背景から,即時的な疼痛軽減と椎体安定化を目的とした経皮的椎体形成術〔percutaneous vertebroplasty(PVP)およびballoon kyphoplasty(BKP)〕が,早期離床や機能回復に寄与する治療選択肢として一定の役割を担うことが報告されている7,20).また,骨粗鬆症椎体に対するpedicle screw固定では,初期固定性向上を目的としたポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate:PMMA)注入型cannulated screw augmentationが近年広く用いられており,その固定性向上効果や臨床的有用性が報告されている6).
一方,これらの脊椎外科手術において頻用されるPMMA骨セメントには,椎体外漏出や血管内流入,さらには続発性椎体骨折などの合併症が一定頻度で報告されている18).これらの背景には,重合時の発熱,高弾性率,生体内非吸収性といったPMMA固有の材料学的特性が深く関与している6).
本稿では,PMMA骨セメントの基礎特性を整理し,臨床上問題となる重合熱および力学特性の影響を概説するとともに,高粘度型・低温硬化型セメント,抗生剤含有セメント,生体活性セメントなど近年の改良技術31)とその臨床的意義について概説する.

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