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はじめに
Currarino症候群(Currarino syndrome:CS)は,1981年にGuido Currarinoらによって初めて体系的に報告された,①仙骨奇形(sacral anomaly),②直腸肛門奇形(anorectal malformation),③仙骨前腫瘤(presacral mass)を三主徴とするまれな先天性疾患群である3).発症機序として,発生学的な内胚葉と外胚葉の分離異常が示唆されている.CSの臨床表現型は非常に多様であり,古典的な三徴が完全には現れないことが多い.発生頻度については国内で300例程度という報告10)もあれば,表現型の多様性から10万人あたり1〜9人など患者数の推定は幅広く報告されている5).常染色体顕性(優性)遺伝の形式をとり,常染色体7q36.3上のMNX1遺伝子に影響を及ぼす変異が家族例の92.3%,孤発例の32%で認められると報告されている5,9).男女比については女性にやや多くみられる(男性1人に対し女性1.39人)と一部で報告されている5).Currarino症候群の80%は遅くとも16歳までに診断されると報告されているが,表現型の多様性から成人になって初めて診断されるケースもある5).この表現型の多様性により,臨床像は新生児期の腸閉塞や乳児期の難治性便秘といった重篤なものから,成人期になってほかの理由で行われた画像検査で偶然発見される無症候性のものまで,きわめて多岐にわたる.三徴がすべて揃うのは全体の約20%に過ぎず,多くは一部の徴候のみを呈する.約1/3の患者は生涯無症状であるとも報告されている11).このため,診断が遅れたり,見逃されたりすることも少なくない.本稿では,Currarino症候群について自験例も踏まえて解説する.

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