- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今回の特集では,脊髄腫瘍の中でも髄外腫瘍の手術を取り上げた.髄外腫瘍の大半は神経鞘腫および髄膜腫の良性腫瘍であるため,手術の成否がすべてを決定するといっても過言ではない.手術によって安全に腫瘍摘出が完了できれば,術後の神経機能回復は良好である.さらに,病理診断にて良性腫瘍であることが確認できれば,腫瘍再発の懸念も少ないといえる.本邦での統計では神経鞘腫の頻度が高く,髄膜腫は女性に多く発生する傾向にある.手術については,髄内腫瘍と比べて手術難易度は高くないが,腫瘍局在・進展によっては難渋することがある.腫瘍が硬膜内に限局する場合,多くの症例で脊椎後方片側開創にて安全に腫瘍摘出が可能であり,特に腰椎レベルにおける馬尾発生の神経鞘腫では腰椎後方片側からの最小限の開創で十分である.しかし,頸胸椎レベルでは,脊髄の安全な圧迫解除を最優先とした手術方法を計画すべき場合がある.手術戦略で問題となるのは,神経鞘腫ではダンベル型腫瘍(砂時計腫)である.特に,Eden分類2型および3型では,脊柱支持性を考慮した腫瘍露出および摘出を行い,必要に応じて脊柱再建を行う必要がある.頸椎では椎骨動脈と腫瘍の位置関係を理解することも重要である.腫瘍摘出においては,硬膜および神経上膜の連続性を考慮した手術操作が求められる.髄膜腫では,腫瘍主座が背側であれば難渋することは少ないが,腹側の場合には手術安全性と根治的腫瘍摘出の両方が課題となる.大きく開創して固定術併用も可能であるが,手術の低侵襲性を考慮することも大事である.
今回,特集タイトルを「髄外腫瘍の手術を極める」として,良性の神経鞘腫と髄膜腫の手術について,手術戦略に迷う症例に特化して手術根治性・安全性の観点から解説していただいた.神経鞘腫の手術では,上位頸椎ダンベル型,中下位頸椎ダンベル型,胸椎ダンベル型,腰椎ダンベル型に分けて論じていただき,髄膜腫の手術では,脊柱管腹側型に特化して脳神経外科・整形外科双方の視点から手術の重要点を解説していただいた.髄外腫瘍の手術においては,経験が多い術者でも手術計画に迷う場合が必ずある.そのような場合には,本特集をぜひ参考にしていただきたいと思う.

Copyright © 2025, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.