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脊椎の中でも頸椎が前に弯曲し,首が垂れて前を向けない病気のことを首下がり症候群といいます.1817年にパーキンソン病に伴う姿勢異常として報告され,本邦では,三浦謹之助が1897年に眼瞼下垂と咀嚼運動障害を伴う首下がりを東北地方で特有にみられる風土病として報告しました.首下がり症候群の原因はさまざまであり,病態に応じた治療が必要となります.本書によると,特発性が多く7割を占め,次に外傷性,パーキンソン病,頸椎手術後,自己免疫疾患が続きます.特に,特発性の発症は加齢性変化や老化現象が深く関与すると考えられています.
過去に首下がりに関する教科書がない中,2020年に旧首下がり研究会が最小侵襲脊椎治療学会(MIST学会)の分科会として設立され,その背景をもって本書の企画が生まれました.本書は本邦のトップランナーである著者らにより,疾患概要,診察と検査方法,治療法として治療選択の基本的な進め方,保存療法(薬物療法,リハビリテーション,リハビリテーションと生活指導,装具療法,装着型ロボットスーツ),手術療法が明快に記載されています.現状では首下がりに対するリハビリテーションは確立されていませんが,2020年に本邦で行われた首下がりに特化したshort and intensive rehabilitation(SHAiR)プログラムの有効性が検証され,現状,SHAiRは従来のプログラムよりも高い有効性が実証されている唯一のプログラムといえるでしょう.また,手術療法においては手術適応,術式,後療法,成績,合併症として嚥下障害などが詳しく紹介されています.各病態に応じて,手術方法,矯正固定高位も異なり,実際のエビデンスに基づいた最良の手術方法が述べられています.

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