編集後記

　近年，十二指腸腺腫とM癌・SM癌の知見が集積され，細胞形質に基づく分類の重要性が明らかにされつつある．非乳頭部十二指腸において腸型の腺癌は腸型腺腫を前癌病変とするadenoma-carcinoma sequenceを発癌経路とするのに対して，胃型の腺癌は異所性胃型上皮（腫瘍様病変）に由来し，異所性胃型上皮—胃型腺腫—腺癌という多段階発癌経路の存在が示唆され，胃型腺癌は腸型線癌と比較し有意にSM浸潤頻度が高くリンパ節転移が高頻度であること，進行癌では胃型形質が予後不良因子であることなどが報告されている．一方，報告の大部分は腺腫とM癌であり，国内の内視鏡的切除例を集積した多施設検討によればSM癌はその1.4%（Kato M, et al. Endoscopy　54：663-670, 2022）にとどまっている．現在までに，本誌を含めた医学雑誌にSM癌の内視鏡像が提示された例は皆無に近く，SM癌の臨床病理学的特徴も依然不明である．

　本特集号は，非乳頭部十二指腸浸潤癌の臨床病理学的特徴を明らかにすべく，M癌と浸潤癌を特に形質発現との関係に注目して比較・検討することで，どのような病変が浸潤癌へ進展していくのかを解明することを目的として企画された．