Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「市外戦のジャズメン 作家 佐藤泰志の衝撃」—1960年代後半の高校生の心象風景を刻印する試み
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.1063
発行日 2025年10月10日
Published Date 2025/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530101063
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「三派全学連」による1967年の佐藤栄作首相(当時)の南ベトナム訪問阻止をめざす「10・8羽田闘争」(以下,10・8)は,学生たちがヘルメットと角材で武装した端緒であり,京都大学1回生,山﨑博昭(当時18歳)が機動隊との衝突で命を落とした.この死は<自分たちはどうすればよいのか?>と問う高校生を少なからず生み,函館西高校3年生の佐藤泰志(1949〜1990年,以下,泰志)もその一人だった.小学生時代に60年安保闘争を目撃した泰志にとって,「全学連」とは未来の自分の姿でもあった.
その前年,1966年の北海道新聞社主催 第4回有島青少年文芸賞の優秀賞を「青春の記憶」によって受賞していた泰志は,同賞締切の10月末日に向け,10・8の衝撃を投影させた「市外戦の中のジャズメン」(後に「市外戦のジャズメン」と改題)を一気に書き上げ,2年連続の優秀賞受賞となった.ただし,北海道新聞に全文掲載という前年同様の扱いにはならなかった.ダンスホールでの喫煙の描写や「佐藤を殺せ」といった言葉が賞の性格にそぐわなかったようだ.
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