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【1940,1950年代の展開の評価,米国】
1930年代に胃リンパ流の再検討がなされ(Rouvière:1933年,井上:1936年),その成果の実践での展開が胃全摘,大網広範切除,膵脾合併切除および系統的リンパ節郭清の4つの方向に向けられてきました.それが1940,1950年代の胃癌リンパ節郭清の展開であり,これまでのMikuliczの郭清体系が乗り越えられるかと期待されました.4つの展開のうち前3者は米国を中心に実践されてきましたが,そこではリンパ流の再検討の成果を十分に生かしきれなかったことはすでに述べたところです(本連載第16回).そして,1960年代に入るとこれらの展開への批判的論評が現れました.ここでは2つの論文を紹介します.
1つはNew York Memorial CenterからのLawrence,McNeer論文です1).Memorial Centerといえば,郭清の展開の3つの方向を積極的に推進してきた施設であり,その状況は本連載でもしばしば取り上げて紹介してきたところです.論旨は,1951年に始まるextended total gastrectomy(a vigorous trial of this including an en block resection of both omenta, distal pancreas, and spleen)と,それ以前のsubtotal gastrectomyを術後生存率で比較したものです.結論は,原図を多少修正した図1にみるように,extended total gastrectomyの生存率への寄与を否定するものでした.症例が1930年,1940年,1950年代と3区分されています.1930年代の胃切除は死亡率も20%から10%台に降下しましたが,まだ安定した術式とは言い難く,1940年代になってoperability,resectabilityが上昇し,胃切除術が胃癌の切除術式として確立したとみることができます.そして,1950年代に胃癌に対する胃全摘が導入されました.これによってoperabilityは多少上昇しましたがresectabilityは横ばいで,5年生存率も期待に反して1940年代と同等でした.
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