Japanese
English
特集 重複障害のリハビリテーション
肢体不自由の重複障害への対応
Rehabilitation for the multiple physical disabilities
鈴木 麻千子
1
,
蓮井 誠
2
,
山内 克哉
1
Machiko Suzuki
1
,
Makoto Hasui
2
,
Katsuya Yamauchi
1
1浜松医科大学医学部附属病院リハビリテーション科
2JA静岡厚生連遠州病院リハビリテーション科
1Department of Rehabilitation Medicine, Hamamatsu University School of Medicine
2Department of Rehabilitation, JA Shizuoka Kohseiren Enshu Hospital
キーワード:
重複障害
,
脳卒中後片麻痺
,
運動器疾患
Keyword:
重複障害
,
脳卒中後片麻痺
,
運動器疾患
pp.887-893
発行日 2025年9月10日
Published Date 2025/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530090887
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はじめに
肢体不自由とは,左右の上肢(手・腕)と下肢(足),体幹(背骨を中心とした上半身と頸部)のいずれかの部位において,日常生活上の動作が困難となるような運動機能の障害が発生し永続する状態をいう.2022年の調査では全国の身体障害者手帳所持者は416万人で,そのうち肢体不自由が158万人と全体の38%を占めると報告されている1).
肢体不自由の原因疾患には脳血管障害,脳性麻痺,脊髄損傷,骨関節疾患,リウマチ性疾患,神経筋疾患などがある.近年では高齢化の進行に伴い後天的な肢体不自由者の増加が顕著となっており,さらに複数の原因疾患を合併した重複障害者も増加している.例えば,脳卒中による片麻痺患者が転倒により大腿骨頸部を骨折する件数は,年間で約1万件以上と推計されている.これは,患者の日常生活動作(activities of daily living:ADL)の低下や生活の質(quality of life:QOL)の低下をもたらすだけでなく,入院中の医療費や退院後の在宅サービス費用が増大する点でも医療経済にも大きな影響を及ぼす問題となっている.
本稿では脳卒中による片麻痺に加え,骨折や変形性関節症,関節リウマチなどの運動器疾患を合併した肢体不自由の重複障害例に焦点をあて,リハビリテーション治療のポイントについて症例を交えて解説する.

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