Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「わたしの物語」—障害のある若き映像作家が世に問う障害観構築の新たな視座
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.425
発行日 2025年4月10日
Published Date 2025/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530040425
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わが国の教育の目的は「人格の完成」である.実態はどうあれ,教育基本法が第1条に掲げていることだ.これを受けて,障害児教育の実践者である筆者が,自身の活動を通じて立ち上げた目標イメージは,「発達の道を力強く歩む主体の形成」であり,それは個々の子供たちがかかえる障害の軽減や改善をめざすこととも連動するアプローチであった.個々の発達と障害の軽減・改善を一体のものとして進める実践は,本人,家族をはじめとする多くの人々の願いに応えるものであり,教育,療育を問わず,多くの実践者にとって自明なことであろう.
一方,このような「自明性」に対して,疑念の声が挙がっていることも事実である.股関節がなく,大腿骨が短い1992年生まれのイギリス人女性映画監督エラ・グレンディニングによるセルフドキュメンタリー「わたしの物語」は,その典型といえよう.本作はエラが自分と同じ障害のある人を探す4年間の営みの記録だが,並行してエラの妊娠・出産と,子育てをしている母親としての生活の様子も収められ,この二重性が障害をテーマにした映画としての深みと説得力を醸し出している.
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