連載 アーキテクチャー×マネジメント・122
—設備の視点から—病院給食を支える建築・設備
石橋 達勇
1
1北海学園大学工学部建築学科
pp.170-175
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038523770840030170
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■はじめに
昨今の病院給食を取り巻く状況について,厳しい環境に置かれていることをよく耳にする.具体的には以下のような問題や特性を有していることが挙げられる.
・給食生産部門の非採算性
令和6年度診療報酬改定に合わせて入院時食事療養費は増額したものの,人件費や材料費の上昇もあり,採算性に乏しい状況が継続している.
・給食生産に従事する人手不足
一般に早朝から夜間まで作業時間が長いために多くの人手が必要となるが,その需要に応えるだけの人材の確保がままならない.また人手不足は業務の習熟度の低下や短期離職による新人への教育回数の増加などの問題にもつながる.
・食中毒などのリスク
大量の食品の調理・加工を行っていることなどから加熱不足の発生や衛生環境の管理の難しさがある.
・入院患者からの期待
つらい療養生活が続く入院患者にとって数少ない楽しみであるが故に,給食への期待値が高く,時には厳しい評価が下ることもある.
・多様な入院患者属性への適応
病院給食はさまざまな制限を受けた患者向けの特別食を提供する必要がある.また現在の高齢化や在院日数の短縮により入院患者は重症度が高い傾向にあることを考えると,特別食や介護食が全給食数に占める割合は増加していることが想像できる.この特別食や介護食の食数の増加は,生産現場における業務量の増大に直結する.
これらの課題に対して,業務を行う上での衛生管理,食味の均一性・再現性の確保,生産の円滑性や効率性の向上などを目標に据えたさまざまな取り組みが厨房を中心に行われている.本稿ではそれら取り組みを紹介するとともに,その取り組みを担保している建築・設備との関係を述べる.

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