特集 病院のセキュリティ
病院の安全と建築・設備
中山 茂樹
1
1千葉大学大学院 工学研究科
キーワード:
病院建築
,
建築設備
,
安全
,
ファシリティ・マネジメント
,
医療の質
Keyword:
病院建築
,
建築設備
,
安全
,
ファシリティ・マネジメント
,
医療の質
pp.523-526
発行日 2012年7月1日
Published Date 2012/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102301
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■環境を理解するということ
まず,写真1をご覧いただきたい.左の写真はJRの改札であるが,ここを通過するプロセスを想像してほしい.切符を投入するとゲートが開くので前進し,改札機の向こうに出ている切符を受取って,改札を通り抜ける.誰もがスムースに通過できるだろう.右の写真はミラノの地下鉄駅の改札機である.ここでは切符を投入しても,ゲートは開かない.投入口とは別の吐き出し口から切符が出てくるので,それを取上げると,ゲートが開き,通過することができる.ちょっとした操作手順の相違であるが,ふだん使い慣れた機械でないと,その方法がわからず,戸惑うことがある.後者の装置はパリやロンドンの地下鉄も同じスタイルである.パリの地下鉄駅の行列の先に,まごついている日本人の姿をご覧になった方は多いはずだ.
人は内面化された認知の枠組みに照らし合わせて環境を理解するとされている.上述の内容は,器械操作が通常の手続きでないと,わかりにくさ,あるいは不慣れな戸惑いを発生する例である.私たちはよどみない活動をコントロールしうる手続きを含む知識構造を有しており,出来事・行動・対象物について過去の経験から習得される一般的知識に基づいて行動している.これを認知心理学ではスキーマと呼ぶ.
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