連載 アーキテクチャー×マネジメント・124
—設備の視点から—手洗い設備:建築・設備からみた感染対策
境野 健太郎
1
1工学院大学建築学部建築学科
pp.338-342
発行日 2025年5月1日
Published Date 2025/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038523770840050338
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■感染対策の基本的な考え方
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは,日常生活における感染対策の重要性を再認識させる契機となった.特に医療の現場においては,通常の医療提供体制の維持継続が困難な状況に陥る中で,院内クラスターの回避はもちろんのこと,日常の医療を守るための院内感染対策の徹底が求められた.この20年ほどの間に,SARSやMERS,COVID-19などの感染症の発生が世界規模でみられており,人びとの往来や交流が活発になった現代では,新興感染症への迅速な対応が不可欠になっている.
一方で,COVID-19の対応経験は,新種の病原体に対しても,従来の感染対策の徹底が有効であることを明確にした.感染症の感染経路には,接触感染・飛沫感染などの直接感染と,空気感染・経口感染などの間接感染の2つがあるが,基本となる「標準的な感染予防策」は,全ての人の血液・体液・分泌物・排泄物などは感染性を有することを前提として対策することである.感染経路の遮断には,手指洗浄やマスク・手袋などの個人防護具の着用,器具・器材の適切な取り扱いが求められるが,コロナ禍を経てユニバーサルマスキング(院内における全ての人がマスクを着用すること)が感染対策として有効であることが示された.

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