増大特集 ワクチン開発
特集「ワクチン開発」によせて
岡田 随象
1,2,3
,
河岡 義裕
4,5
1東京大学大学院医学系研究科
2大阪大学大学院医学系研究科
3理化学研究所生命医科学研究センター
4東京大学国際高等研究所新世代感染症センター(UTOPIA)
5国立国際医療研究センター国際ウイルス感染症研究センター
pp.397
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760050397
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人類の歴史は感染症との戦いの歴史でもありました。幾多の病原体の脅威に曝されてきたなかで,ワクチン開発は人類の健康と社会への多大な貢献を果たしてきました。いまだ記憶に新しい新型コロナウイルス感染症パンデミックにおいて,ワクチンの重要性は改めて世界的に認識されるに至りました。来るべくネクストパンデミックへの備えとして,わが国におけるワクチン開発の戦略的展開は急務の課題です。
先進的研究開発戦略センター(Strategic Center of Biomedical Advanced Vaccine Research and Development for Preparedness and Response;SCARDA)は,日本医療研究開発機構(AMED)「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」を通じ,令和4年3月に設置されました。フラッグシップ拠点(東京大学),シナジー拠点(北海道大学,千葉大学,大阪大学,長崎大学),サポート機関(京都大学,実中研,理化学研究所,医薬基盤・健康・栄養研究所,東京大学医科学研究所,滋賀医科大学),で構成される10施設・約200名の国内トップレベル研究者が集う研究組織として,日夜ワクチン開発研究が進められています。基礎医学,臨床医学,医療倫理,公衆衛生,社会実装,と多岐にわたる研究分野が網羅された学際連合としての特徴も有しています。発足より3年半が経過し,革新的なワクチン開発技術の進展に加え,ヒト免疫システムの理解やワクチン開発に直接的に貢献し得る研究成果やシーズ導出が認められつつあります。

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