哺乳類において，エピジェネティックな情報は遺伝するか？

Does transgenerational epigenetic inheritance occur in mammals?

　エピジェネティック修飾とは，DNAやクロマチンへの化学修飾であり，DNA塩基配列の変化を伴わずに，遺伝子発現制御において重要な役割を担っている。親の形質は，精子および卵子が接合子へと運ぶゲノムDNAによって子孫へと継承されるが，このときゲノムDNA配列に加えてエピジェネティックな情報が子孫に引き継がれ得るかは，長年にわたり議論が続けられてきた。ゲノムDNA配列は比較的安定であるのに対して，エピジェネティック修飾は外界からの刺激に応じて変化する可能性があり，それが子孫に継代されることは，親世代の生存環境が子孫の表現型に影響を与える可能性を示唆している。そのため，ヒトをはじめとする哺乳類におけるエピジェネティックな情報の世代間継承の有無，およびその機構を解明することは，現世代のみならず，将来の世代において異常なエピジェネティック情報が引き起こす疾患リスクを軽減するために重要である。