Japanese
English
特集 分子進化学の現在
哺乳類の系統進化
Phylogeny and evolution of mammals
長谷川 政美
1,2
Masami Hasegawa
1,2
1統計数理研究所
2総合研究大学院大学先導科学研究科生命体科学専攻
pp.226-231
発行日 2004年6月15日
Published Date 2004/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100696
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分子生物学の発展に伴い,DNAやたんぱく質などの解析から生物の系統進化を探る分子系統学の研究が盛んになってきた。形態レベルでは,系統関係とは無関係に似たような環境に住む生物の形態が似てくるという収斂進化は,よく起こる現象であり,形態だけに基づいた系統樹推定は間違うことがある。そのために,形態とは独立の証拠から系統樹を推定することが望まれている。
哺乳類のなかでカモノハシ,ハリモグラなどの単孔類,カンガルー,コアラ,オポッサムなどの有袋類以外のメスが胎盤をもつグループは,真獣類(有胎盤哺乳類)と呼ばれる。われわれヒトも真獣類に属するから,真獣類の系統進化を明らかにすることは,われわれ自身の由来を知る上でも重要である。真獣類はクジラやコウモリなどのような非常に特殊化した動物を含む多様なグループであるが,近年の分子系統学的解析から,真獣類の主要なグループの間の系統関係が次第に明らかになってきた(図1)。それは,比較形態学をもとに従来考えられてきた分類体系1)に,多くの点で変更を迫るものである2-6)。
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