Japanese
English
特集 関わり合う脳
Ⅳ.社会性を進化する脳
種内多様性から眺める集合の生態学的帰結—その理解と課題
The ecological consequences of grouping and genetic diversity
上野 尚久
1
,
高橋 佑磨
1
Ueno Takahisa
1
,
Takahashi Yuma
1
1千葉大学大学院理学研究院
キーワード:
群れの効果
,
個性
,
遺伝的多様性
,
多様性の効果
,
コントラリアン
Keyword:
群れの効果
,
個性
,
遺伝的多様性
,
多様性の効果
,
コントラリアン
pp.78-82
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760010078
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人類は家族や共同体といった集合体をつくり,他者と関わり合いながら生活している。古来,集団で暮らすことの恩恵は,人々の間で意識されてきた。「三人寄れば文殊の知恵」という諺は,集団が個人の持つ能力以上の成果を収めることができることを意味する。一方で,昨今,世界的に人間社会のあり方や働き方のキーワードとして,多様性の重要性が盛んに議論されるようになった。21世紀はまさに多様性社会であると言え,様々なところで個性やダイバーシティ(多様性)といった言葉が意識されるようになってきている。なぜなら,人々の持つ個性や多様性が会社やグループの生産性を向上させ,イノベーションを生み出すと期待されているからである。このような集合体や多様性は,人類以外の生物においても同様に存在する。
どのような生物においても,1個体が単独で暮らしているわけではない。それぞれの生物種は,種内で互いに交配したり,餌やすみかをめぐって競争したりしながら,同種個体の集まり,すなわち“個体群”を形づくっている。個体群の中にあるとりわけ強い相互作用を伴った集合体は,“群れ”と呼ばれる。群れの中では,多くの同種個体が調和的な振る舞いを示す。なお,異種の個体が密集し,群れを形成する場合もある。一方,ほとんど例外なく,個体群や動物の群れの構成員は,多様な特徴を潜在的に有している。
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