Japanese
English
解説
—第3回生体の科学賞 受賞記念論文—新規がんシグナル経路の同定と社会実装のための基礎研究
Identification of a novel cancer signaling pathway and foundational research for societal application
菊池 章
1
Kikuchi Akira
1
1大阪大学感染症総合教育研究拠点
キーワード:
DKK1
,
CKAP4
,
抗体医薬
,
難治がん
,
膵がん
Keyword:
DKK1
,
CKAP4
,
抗体医薬
,
難治がん
,
膵がん
pp.83-90
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760010083
- フリーアクセス
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
1981年以降,がんによる死亡者数は日本人の死因のなかで最も多い。5年生存率が90%を超えるがんもある一方で,いまだに50%に満たないがんも存在する。特に難治がんや患者数が少なく治療開発が進まない稀少がんでは治療選択肢が限られており,その長期予後は不良である。がん種特異的な分子を標的とした治療薬の開発は,優れた薬効を示す抗がん剤が上市されているものの,奏効する症例は限られており,生物学的に多様ながん細胞を標的にする分子標的治療薬は質,量共に不足している。
筆者らは,約30年にわたってWntシグナルによる細胞機能制御とその異常によるがん病態の解析を行ってきた。Wntシグナル経路の異常活性化が腫瘍形成に関与することは確立されているが,いまだにWntシグナルを標的とした効果的な抗がん剤の開発は実用化に至っていない。そこで筆者らは,がんにおいて活性化したWntシグナルにより発現制御される複数のがんシグナル経路を新たに同定し,その経路を阻害する薬剤の開発を行っている。

Copyright © 2025, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.