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はじめに
2020年1月に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急激な感染拡大を防ぐため、保健師は多岐にわたる保健活動を担ってきた。しかし、保健所をはじめとする行政機関は、限られた人員で急増する業務に対応せざるを得ず、逼迫した状況に直面していた1)。このような状況を打開するため、行政機関は科学的根拠に基づくCOVID-19対策を推進し、地域や組織を横断したデータ活用を試みた。しかし、オープンデータ化の遅れやデータの非公開、機械可読性の低い様式、統一されていないデータ形式など、さまざまな課題が明らかとなった2)。
こうした課題を背景として、総務省は2020年12月に「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定した3)。DXとは、デジタル技術を活用して人々の生活をより良く変革する取り組みを指す。国は自治体に対し、業務やサービスのデジタル化を推進することで、行政運営の効率化やサービスの質的向上を図るよう求めている3)。保健分野においても、業務のデジタル化が進むことで、より迅速かつ適切な対応が可能となる。とりわけ行政保健師の業務を効果的に推進するためには、保健活動に関するデータを定量化・可視化し、その成果を業務評価や改善に活用することが重要である4)。
一方で、保健活動におけるDX推進には幾つかの課題も指摘されている。例えば、①データ入力形式の標準化の遅れ、②評価指標および分析手法の不明確さ、③データを扱う保健師のスキル不足などが、Plan[計画]-Do[実施]-Check[評価]-Action[改善](PDCA)サイクルの円滑な運用を妨げる要因として報告されている4)。
こうした背景を踏まえ、広島県では保健活動の可視化を目的とした取り組みを行ってきた。その一環として、災害医療分野で実績のある「Surveillance in Post Extreme Emergencies and Disasters-Japan version: J-SPEED」を応用した「広島県COVID-19版J-SPEED」を導入し、県内のCOVID-19対応に広く活用した。さらに、このシステムについて、米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)が作成した「公衆衛生サーベイランスシステム評価ガイドライン」に基づいて評価した結果、保健活動の可視化を促進するツールとしての有用性が確認された。これを踏まえ、広島県では行政保健師を対象に、J-SPEEDを用いたデータ活用に関する研修会を実施した。本研修会は、県事業の一環として行われたものである。
J-SPEEDの導入により、保健活動のプロセスおよび成果の可視化が進み、PDCAサイクルの円滑な運用を通じて、エビデンスに基づく実践的な保健活動への展開が期待される。本稿では、J-SPEEDを活用した研修会実施に至るまでの取り組み、研修会後の評価結果、そして今後の展望について報告する。

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