映画の時間
—歴史あるものづくりの精神と今抱える問題を見つめ、この先を照らす芳醇な感動作。—種まく旅人—醪のささやき
桜山 豊夫
pp.933
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.036851870890100933
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農林水産省の研修会でしょうか、会議室で日本酒に関することが話題になっています。日本酒の消費量が減少しており、その原因として、若者の飲み会が減っていることや、アルコール飲料の種類が増えていることなどが指摘されています。この研修で講師(永島敏行)から紹介されたのが、今月ご紹介する映画の主人公の神崎理恵(菊川怜)です。彼女は農水省の地域調査官。日本酒をこよなく愛し、酒造りの行く末に不安を感じているようです。講師は彼女の上司のようで、彼の提案で神崎は酒造りの現状を知るべく、酒造りの現場を訪れることになります。
神崎が訪れたのは、兵庫県淡路島の老舗の酒蔵千年一酒造、ここでは神崎の好きな「月の舟」という日本酒を造っています。杜氏や蔵人(くらびと)による仕込み作業を、蔵元の5代目に当たる孝之(金子隼也)から説明を聞きながら見学します。4代目である現社長(升毅)は農水省の官僚が、酒造りの上っ面だけ見学しても、現場の酒造りには何の役にも立たないと、見学に懐疑的でしたが、神崎が上っ面でなくきちんと学びたいと申し出た熱心さに感じ入るところがあり、住み込みでの手伝いを認めることになります。
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