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はじめに
看護技術の習得には、繰り返しの練習が必要である。従来、看護基礎教育における技術演習では、教科書や紙媒体のチェックリストを用いて練習することが一般的である。しかし、吸引などの清潔操作を伴い、かつ複雑な看護技術を練習する際、教科書や紙をめくる手間により、手技の流れが止まるなど、より実践に近い形で練習することが難しい。また、教科書のみで手技を自己練習する場合、情報が混在し、誤解を伴う練習につながる危険性が指摘されている1)。
現在、わが国ではSociety 5.0が推進され、看護教育においてもDXが進んでいる。その中で、AR(Augmented Reality)という、現実世界に文字・画像・動画などのデジタル情報を重ねて表示し、現実の環境を拡張する技術を活用した教育が注目されている。本学では、同臨床工学科の医療AR支援システムの開発2)を経て、臨床工学、リハビリテーション、看護という異なるバックグラウンドを持つ専門家による「戦略的教育プロジェクト」を始動し、ARやVR(Virtual Reality)を用いた教育用コンテンツを開発している。
2024年度からは、デジタルヘルス・イノベーションセンターが設立され、その活動をさらに推進させている。この活動の一環として、看護学科では看護学生を対象に、気管内吸引の手技獲得を目指す「AR機能付きスマートグラス(以下、ARスマートグラス)を用いた自己練習コンテンツ」を開発し、一定の効果があることを確認した3)。
本稿では、ARスマートグラスを用いた自己練習コンテンツの開発経緯や仕組み、ユーザーである学生の体験から考えられたARスマートグラスと紙テキストによる自己練習の双方の利点と課題について、紹介する。

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