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はじめに
Knowledge synthesis (以下,KS)レビューは,近年増加している研究手法です。KSレビューでは,特定の疑問に答えるために文献を統合したり,意思決定を支援するためのエビデンスに基づくレビューを作成するためにエビデンスをマッピングしたりします。これには,システマティックレビュー(以下,SR),スコーピングレビュー(以下,ScR),迅速レビューなどがあります。ScRは,利用可能な研究文献の潜在的な規模と範囲の予備的な評価を提供するレビュータイプです。このレビューの目的は,研究エビデンスの性質と範囲を特定することであり,多くの場合,進行中の研究も含まれます(Grant & Booth, 2009)。
ScRはもちろん,SR,マッピングレビューの実施に関するガイドラインでは,経験豊富な医学・ヘルスケア関連の図書館員またはInformation specialist(以下,司書)をチームのメンバーに含めることを明確に推奨しています(Lefebvre et al., 2024;The Methodological Group of the Campbell Collaboration,2016 ; Institute of Medicine Committee on Standards for Systematic Reviews of Comparative Effectiveness Research, 2011; Peters et al., 2024; Peters et al., 2021)。これは,この種のエビデンス統合研究には,系統的で透明性が高く,再現性のある検索戦略など,確立された方法論プロトコルの遵守が求められているためです。検索の専門家である司書が研究チームのメンバーに加わることで,SRやScRのために実施される検索の質,方法論,報告の質が向上するということが,調査から明らかになっています(Aamodt et al., 2019; Morris et al., 2016; Rethlefsen et al., 2015; Schellinger et al., 2021)。また,検索だけではなく,リサーチクエスチョン(以下,RQ)の設定やプロトコル作成のサポート,レビューデータのキュレーション・管理など,研究者と協力することでレビューにおける共同研究者の役割を果たすことが,海外では一般的になりつつあります(Crum & Cooper, 2013; Spencer & Eldredge, 2018)。系統的で透明性が高く,再現性のある検索戦略*の構築は司書にしかできないことではありませんが,餅は餅屋というように,データベースの特性について知識や経験をもった検索担当者のほうが,より質の高いレビューをサポートできるのではないかと筆者は考えています。
それでは,実際のエビデンス統合(Evidence Synthesis:以下,ES)の流れに沿って,司書がどのようにレビューに貢献できるかを,司書の立場で見ていきたいと思います。研究者(レビュートピックの専門家)が行う作業は,レビュー方法論とプロセスの概要をご参照ください。

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