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内科当直 意識障害診療指南

内科当直 意識障害診療指南
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筆頭著者 駒ヶ嶺 朋子 (著)

獨協医科大学内科学(神経)

金芳堂

電子版ISBN

電子版発売日 2022年12月23日

ページ数 188

判型 A5

印刷版ISBN 978-4-7653-1926-3

印刷版発行年月 2023年1月

DOI https://doi.org/10.50910/9784765319263

書籍・雑誌概要

医師を長時間労働から解放し、患者に最良の医療として還元すべく始まる全科当直・内科当直。そのために、意識障害に特化した当直マニュアルを作成しました。今は違う科にいる医師にもわかりやすいように、また、過去の学習を思い出してもらえるように疾患名、鑑別、検査、治療案の提示などを記しています。ただ、専門科でなければ太刀打ちできない場面も実際には多々あるので、そこは「専門医コールポイント」として明示しています。必要なときは専門医を頼って限界を表明できる体制こそ、患者の安全につながる真の働き方改革をもたらします。

序文
長時間労働が美徳とされるこの国にも、働き方改革の波が訪れた。医師に関しては導入が先延ばしにされたことで、医師の労働問題の複雑さが逆に際立ってしまった。1週間のうちのどこかで療養型病院など寝当直の日を設けて睡眠不足を補う、それ以外は多忙な当直に明け暮れる、という医局員の派遣プランは、別に声高に語るまでもないごく普通の勤務体制であった。表向きの当直日数が週1回程度と少ない病院では、「担当医制度」が取られ、当直医ではなく担当医が24時間365日呼び出しに応じる生活があった。もちろんこうした呼び出しは任意であり、時間外手当はない。

もっと古い話だと、かつて総合病院の隣には雀荘やバーがあり、医師たちは当直以外の夜間・休日でも任意で集まり、ついでに病院内の回診をしたり呼び出しに応じていた。もちろんただ集まって遊んでいるだけであり給料は出ない。大先輩方から逸話として聴取した。滅私奉公の美しさの片鱗がないとは言えないこのような逸話も、やがて失われていくだろう。これらを過去の話として語る一方で、執筆現在においても、たった数年前には希望にあふれていた者が、燃え尽き症候群によって最前線を辞退していく現状がある。

世間への医療情報の提供は、とかく病院受診を促す方向で行われてきた。結果、国民医療費は44兆円、経済活動としての医療は右肩上がりの成長を続けている。経済的に著しい成長分野でありながら、末端の担い手・医師は相応の増員をしておらず、対価としての給与が年々上がっている事実もない。

働き方改革によって何か変わるのか。労働基準法の8時間に限定してしまうと多くの病院で医師の数は充分ではない。一人一人が膨大な数の患者さんを交代で担当し、雀荘やバーでのようなつながりもないならば症例のちょっとした相談をすることもできない。逆に医師を適正な数に増やせたとして、経営者は対価を払えない。この国の病院の数と医師の数のバランスは、総合病院や大学病院での無償の奉仕を前提として成り立ってきた。

医療はこれまで、専門性を高めることで進歩し、科の垣根は高く積み上がるばかりであった。今後、医師の育成段階から、科や地域の分配を行う、専門に偏らず幅広い知識を持つ総合内科の医師を増やす、など改革が行われていく。この先はきっと今より明るい。ただ、それらの抜本的な対策が奏効するのはまだ先のことだ。救援人員が現場に届けられないまま、いきなり始まる働き方改革に伴い、医師一人あたりの当直回数を減らす方法が模索されている。なんとか工夫を凝らした方法のうちの一つとして、全科当直や内科合同当直が挙げられる。

慢性的な医師不足にある総合病院で行われてきたこれらの当直体制が、専門分化した病院でも行われる。全科当直は小児科、外科、産婦人科、内科、精神科、いずれの科の医師でも、病院の標榜科すべての夜間・休日診療を病棟・外来で行う体制のことである。内科合同当直とは血液内科、脳神経内科、内分泌科などの各内科系の専門科の垣根を超えて夜間・休日診療を病棟・外来で行う体制のことである。全科や内科合同の組み合わせはそれぞれの病院で異なるが、これまで以上に、医師一人一人に総合内科的な知識と、各々の科のコモンディジーズに関する知識のアップデートが求められている。

いまこそ、それぞれの科が、夜間当直で出合う頻度の高い疾患や、緊急性が高くその場で処置や検査を進めていくべき疾患の知識を出し合う時である。リウマチ科からの生物学的製剤の注意点解説や、血液・腫瘍内科からの抗癌剤TIPSなど、全科当直にあたって知りたいものだ。さしあたって神経内科専門医の私からは「意識障害診療のまとめ」を提出する。夜間・休日の意識障害診療で、脳神経内科医以外の医師も時間外診療で慌てず落ち着いて全力を発揮できるよう、意識障害におけるコモンを要約した。

目次

PART 1 概論
第1章 全身疾患と意識障害
意識障害のグラデーション
意識障害の原因を把握するためのルーチン
トリアージとの関連

第2章 発症経過
病歴聴取
経過だけで診断できる場合がある
時系列変化でしかわからないこと

第3章 意識障害の分類
意識とは何か
意識障害の分類
遷延性意識障害について
「脳死」について
全身状態の回復の見込みがない中の意思決定

第4章 意識障害診療での診察法:ルーチンの神経診察
視診・聴診・そのほか
眼球運動の診察
姿勢や麻痺の診察
そのほか徴候の評価
スコアを用いた意識障害での運動・反射の評価
遷延性意識障害の評価

PART 2 各論
第5章 代謝性意識障害
代謝と意識障害
血糖・電解質異常による脳症
そのほかの代謝性脳症

第6章 薬剤性意識障害
乱用薬物・過量服薬・誤飲による急性薬物中毒
アルコール関連意識障害
市販薬
常用量の処方薬による意識障害

第7章 てんかん
てんかん
けいれん重積

第8章 頭蓋内病変
脳血管疾患
頭部外傷

第9章 髄膜炎・感染性脳炎
髄膜炎について
単純ヘルペスおよび帯状疱疹ウイルス中枢神経感染症

第10章 自己免疫性脳炎
急性脳炎と自己免疫性脳炎
自己免疫性精神病
そのほかの急性脳炎

第11章 機能性神経障害
生物学的現象としての解離
救急外来を撹乱させる機能性神経障害
機能性神経障害の診断
鑑別疾患
治療と予防

第12章 認知症と意識障害
認知症の評価と理解
認知症類似疾患の鑑別と検査
アルツハイマー病・血管性認知症とせん妄
意識障害
パーキンソン病
レビー小体型認知症とせん妄
意識障害
意識障害とデフォルトモードネットワーク(DMN)

2択で迫るケースコラム
緊張病性昏迷 vs 蘇生後脳症による最小意識状態
アルコール離脱症候群 vs ウェルニッケ脳症
むずむず脚症候群 vs 薬剤性アカシジア
失神 vs てんかん
せん妄 vs レビー小体型認知症

コラム
意識障害と道路交通法
機能性神経障害に対峙した時の不安