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赤ふん坊やと学ぶ! 地域医療がもっと楽しくなるエッセンス111
筆頭著者 井階 友貴 (著)
福井大学医学部地域プライマリケア講座
金芳堂
電子版ISBN
電子版発売日 2022年9月19日
ページ数 306
判型 A5
印刷版ISBN 978-4-7653-1918-8
印刷版発行年月 2022年9月
書籍・雑誌概要
「ここの地域の医療は何もかもが理想的で、すべてが完璧」、「このまちの医療は素晴らしすぎてもう望むものは何もない」という場所は日本全国どこにもありません。それぞれの地域に根差した医療を実現させるため、地域医療・介護従事者らは、行政関係者、住民の皆さんと一緒に解決策を探しています。地域課題解決には終わりがなく、だからこそ楽しい一面もあるのです。凝り固まってしまった考え方を少し変えてみたり、患者さんのご家族に思いを馳せてみたり、今日からできることはいろいろあります。
本書では福井県高浜町のマスコットキャラクター“赤ふん坊や”の4コママンガで面白おかしく地域の問題を取り上げ、解決策を探っています。真似できることもたくさん! 自分ひとりだけで背負うのではなく、多職種で地域医療を上手に支えていきませんか?
序文
地域医療の現場に出て、早14年半が過ぎようとしています。
子どもの頃、インフルエンザや胃腸カゼでかかった地元の個人診療所。医療機関なのに落ち着いた雰囲気で、挨拶や会話を交わす周りの患者さんの表情も穏やか、居心地のよさすら感じるあたたかい医療の現場を、朧げに想像しながら医師になった自分。
研修医として総合病院で研鑽する中で感じたのは、生来健康で現役専業農家の70歳男性の肺炎と、寝たきり・施設入所中の90歳男性の肺炎が、ほぼ同じ土俵―起炎菌は? 抗生剤の選択は? 入院適応は? 呼吸状態の管理は?―で議論されていることへの違和感でした。肺炎が治っても、本質的な問題解決にならないのではないか? あの診療所ならどう対応するのだろう? という思いが膨らみ、悩み抜いた結果、生活現場に近い医療を学ぼうと、卒後4年目で高浜町の町立無床診療所に赴任しました。確固たる研修制度もなかった当時、卒後4年目で地域医療の現場に飛び込むというのは、無謀で珍しいことだったんだと思います、ある都道府県のへき地医療担当者にすら止められたぐらいですから(笑)! 実際に地域医療の現場に立ってみると、おそらくこれはその担当者が心配していたこととは別のことだと思いますが、すぐにその難しさを体感しました。それまで病気を診て病気を治していればよかったものが、患者さんを本質的に理解し、時には家族や地域に視線を向け、全体的に最適な医療を提供する必要があったためです。疾患、患者さん、家族、地域と、視野の倍率を下げて広角にみていくと、目指すべきゴールや理想までがぼやけてしまうのを感じましたし、それに対して絶対的な正解が用意されていないことも確認できました。それでも、理想の医療、理想の地域を追い求めて試行錯誤を繰り返し、現在に至ります。
本書は、そんな14年間の学びと実践の試行錯誤から得た知識と知恵をまとめ、私と同じように目前のキュア・ケアが腑に落ちない地域医療従事者の皆さんが、多少のヒントと思考の後押しを得ていただくために執筆した、「きっかけの書」です。気軽に読んでいただけるように、やわらかい文章でマンガとともにお届けしています。流して全部読んでいただいても、気になる項目だけ読んでいただいても、マンガだけ読んでいただいてもかまいません。私が長年お世話になっている福井県高浜町のマスコットキャラクター「赤ふん坊や」と一緒に、楽しく医療と地域を読み解くことで、読み終えた後に、もっと地域に根差したい、もっと人・地域と向き合いたいと思っていただくことを目指しています。人を想い、地域が大好きな方すべてに本書が届き、共に地域医療を楽しめることを祈っています。
目次
はじめに
1章 全人的医療編
1 欲しいのは 心と心の 「近さ」なり
2 「変わりない」 その一言で 不安飛ぶ
3 求むるは ニーズに合った 幅広さ
4 ずっとみる いろいろなものが みえてくる
5 わからない そんなときこそ 「また来てね」
6 別れ際 「いつでも来てね」 伝えよう
7 地域では 病気が軸じゃ ないんです
8 治せない 今こそ診よう 心理・社会
9 医師じゃない だから気づける こともある
10 病気には 「疾患」、「病」 二面ある
11 一旦は 患者の考え 受け止めて
12 患者はね 「背景」の上に 立っている
13 お互いに 同じ理解か 確かめて
14 情報は 武器や防具じゃ ありません
15 健康は あらゆる機会に 増進可
16 今、元気 明日の元気も 支えよう
17 薬無効 だったら社会を 「処方」しよう
18 何するも 関係性が ものをいう
19 面接の 最初と最後を 全力で
20 多忙でも 傾聴・共感 忘れるな
21 水かけて 関心の芽を 待ちましょう
22 自信ない? だったら褒めて 褒めちぎれ
23 重要性 わからぬのには 理由あり
24 成すために 小さな成功 積み重ね
25 「私なら」 「あの人だったら」 使い分け
26 生活は 生活の中で 語られる
27 「生活の 終わり」も今から 考える
28 人は皆 長生き願うと 限らない
2章 家族ケア編
1 患者さん 家族と影響 与え合う
2 おばあちゃん 家族の健康 見張ってる
3 家族には 負担のかかる 時期がある
4 家族図は 多くのことを 物語る
5 それぞれの 家族のバランス 評価して
6 家族ケア カンファレンスが 集大成
7 ちょっと待て 家族の意見も 聞きましょう
8 無理してない? 介護家族に 声かける
9 死別・離別 グリーフ・ケアで 支えよう
10 この命 家族みんなの 命なり
3章 多職種連携編
1 幅広く 連携すれば 救われる
2 主治医なら 入院しても 主治医たれ
3 退院は 関係づくりの チャンスなり
4 その対応 ケアマネさんが 困ってる
5 その情報 看護師さんが 知っている
6 ツールにて 心と情報 共有す
7 継続性 勤め続ける だけじゃない
8 この仕事 誠心誠意 やり遂げる
9 問いただす 前に敬意を 払うべし
10 人として 好きになるほど うまくいく
11 リーダーは 仕事のやり甲斐 創り出す
12 喧嘩より 相手の事情 察すべし
13 とりあえず 相手の喜ぶ “おせっかい”
14 ユーモアが 立場の垣根を 取り払う
15 物事の 「正義」と「連携」 別次元
16 できぬなら 共に歩んで 成長を
17 「許せない」? ならば連携 あり得ない
18 IPE 互いの価値を 高め合う
19 人がいない? それなら連携 広げよう
20 人がいない? それなら役割 広げよう
4章 行政編
1 要求は 突きつけずまず 聞いてから
2 行政に “上から目線” 厳禁だ
3 やったこと とにかくマメに 報告を
4 あらかじめ 周りに仲間 つくっとく
5 行政の カネに頼ると 危険なり
6 行政の 重い腰上げる “ストーリー”
7 行政の 信頼得たり マスメディア
8 取り組んだ 成果は皆と 分かち合え
9 横串は 外からだから 刺しやすい
10 毎年の 目標設定 不可避なり
11 前例を つくりノウハウ 受け継ごう
5章 住民編
1 あくまでも 医療の主役は 住民なり
2 待つよりも まずは地域に 飛び込もう
3 住民は どんな人でも プロバイダー
4 きっかけを つくって動きを 期待する
5 きっかけは 押し引きバランス 考えて
6 活動は 無理しなければ 長続き
7 諦めず コツコツ続け 花開く
8 貢献で 活動意欲 維持できる
9 自分にも 役立つ活動 持続する
10 医療者の 思いが活動 鼓舞しけり
11 居心地が よければ活動 継続す
12 活動を 時代に合わせて 進化させ
13 外に出て 意欲的な人 見つけよう
14 住民へ 伝えるべきは 住民なり
6章 ヘルスプロモーション編
1 目の前の 人から地域 想起する
2 地域課題 地域診断で 浮き彫りに
3 サイクルを 何度も回し 健康に
4 患者にも 健常者にも アプローチ
5 地域とは 八つの顔持つ パートナー
6 理想から ブレない取り組み 逆算す
7 取り組もう 地域主体に 対等に
8 問題は 「ありき」ではなく 「所在から」
7章 まち・地域づくり編
1 医はすべて 地域抜きには あり得ない
2 地域ごと 「何をやるべき」 異ならん
3 支えよう 住み続けられる まちづくり
4 健康は 社会によって 決められる
5 人とまち “絆の力”で 健康に
6 男には つなげる人が 不可欠だ
7 つながりは 人の行動 変えていく
8 ただ単に 交わるだけで 健康に
9 地域から 支えられると 健康に
10 地域には 縦より横の つながりを
11 友人は 量より質が ものをいう
12 役割と 社会参加は 抱き合わせ
13 格差とは 社会をむしばむ 火種なり
14 “ 笑い”には 健康パワー 隠れてる
15 “楽しさ”で 無関心でも 関われる
16 “つい”を生む ナッジの効いた まちづくり
17 一員と 感じられれば 人動く
18 継続は とかく楽しむ ところから
19 結局は 顔と心の 見える仲
20 目指すのは 「調和なくして 地域なし」
コラム
言葉遊び
鍼を打つ理由
87で死ぬ
これからが青春
風邪ではない
関係ないで
はよ死なせてください
家族の抱える問題
みんな親戚
ほったらかし
意外な情報
機械音痴
赤ふん坊やの意味
めいやー
女性のパワー
何屋さん?
クイズ大会
おしゃべりするだけで
町民体操
「健康」という言葉はダメ
参考文献
あとがき
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