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頸損晩夏
創りつづけた頸髄損傷35年の生活の記録
筆頭著者 上村 数洋 (著)
その他の著者等 上村八代衣、畠山卓朗、小島 操
シービーアール
電子版ISBN
電子版発売日 2020年5月4日
ページ数 196
判型 B5
印刷版ISBN 978-4-908083-22-8
印刷版発行年月 2017年11月
書籍・雑誌概要
著者は26年前に「明日を創る」という本を出版している.事故で頸髄損傷となり,首から下の機能を失いながらも,自宅に戻り,自立した日常生活が送れるようになるまでを描いたものだ.その表紙の装丁,イラストも口にくわえた電子ペンで息を使って自ら描き、本文もマウススティックで打ち込んで仕上げた.当時なんの福祉機器もなく,多くの頸損当事者が寝たきりのままの生活を強いられ,失意のどん底にとどまっている中にあって,彼の自立は奇跡にふさわしかった.著者がどのように自立の道を探っていったのか,その仕掛人となった支援者たちとの交流を克明に記録したその本は,当時,当事者,専門職を問わず全ての人々に広く感動を与えた.
それから26年の歳月が過ぎた.著者はその後も活動を続け,障がいを持つ人の社会参加,就労支援,政策提言をも行っている.いつの間にか支援される側から支援する側になっていたのだ.しかし,麻痺した手足は一度として動くことのないように,動くことのない社会的現実とも直面してきた.障がい者の内側にも,彼らを取り巻く外側にもバリアーは厳然と存在し,簡単には超えることはできない.本書は、受傷当時に支えあった仲間が再会し,奇跡の出会いからの日々を,それぞれが体験した26年を振り返り著した,明日障がいを持つかもしれない仲間たちへのアドバイスとメッセージである.
目次
序文 創りつづけた日々
第1部 受傷から在宅生活まで
第1章 受傷,救急入院そして専門病院に転院
1.受傷のとき―俺は生きているゾー!
2.俺,治るかなぁ―救急病院にて
3.脊損専門病院に転院にして―中部労災病院の入院生活
■Interview/医療者の視点から 小谷俊一
長期間腎機能を保った上村さんは優等生
第2章 私を支えた宝物
1.私の三つの宝物
2.子供時代から培われてきた感情
3.妻は今も障がい児のための指導員
4.愛より強い伝統的規範
第2部 支援技術や人に支えられての自立生活
第3章 自立へ―支援技術との出会い
1.畠山卓朗さんとの日本一幸福な出会い
2.福祉機器を活用することは人間的でなく,冷たいと言われたが…
3.ページめくり機
4.吊り具と電動車いす
5.趣味を取り戻す
6.CGを描く
7.頸損者からの質問に答えようと綴った原稿が後に『明日を創る』という本に
8.自分にもできることがある(生きる自信)
第4章 人との出会い
1.第1回から「リハ工学カンファレンス」に参加
2.知事とのテレビ対談
■Interview/行政の視点から 梶原 拓
中央集権から地方分権へ,さらに市民分権に
第3部 社会参加・就労支援活動に取り組む
第5章 海外の障がい者の事情から学ぶ
1.日米障がい者会議に出席
第6章 社会参加・就労支援のための活動を開始
1.就労を望む声
2.就労を目指す前に必要な課題の解決に向けて
3.夢の実現を目指して
4.障がい者の社会参加を支援する
5.重度障がい者の就労目指して
第7章 バーチャルメディア工房ぎふの登録ワーカー紹介
1.取り組みの紹介―大垣PCサポート
2.仕事を離れて
第4部 障がい当事者の立場から提言する
第8章 福祉工房「Kid’s Dream」の取り組み
1.福祉工房「Kid’s Dream」の取り組み―仕事と生きがい
2.Kid’s Dreamの取り組み―世界中の匠が集まる
3.障がい児の未来をひらく
4.IT環境のバリアフリー化に向けて
5.障がい児のQOLの向上を目指して
第9章 35年経った,今振り返る
1.何が変わったか
2.これまでに浮かび上がってきた問題点・課題
3.恩送り―Life Work
4.受傷後心がけていること
第10章 障がい児・者の参加を考えるとき
1.理解を得るために―がんばればわかってもらえる
2.忘れられない人―7年間がんばって結婚,三つ子の父に
3.個人情報保護がなかったからこそできた
第11章 できたことできなかったこと―持続する活動のむずかしさ
1.原点 思いが伝わらない
2.作業療法士(OT)への期待
3.行政への期待
4.障がいは終わりのない旅
第5部 そして今
1.座談会/未来に伝える―生きるための出会いと支援
上村数洋・上村八代衣・畠山卓朗・小島 操
2.聞き書き/今,伝えたいこと,思っていること 上村数洋・小島 操
3.寄稿/リハ工学の視点から 畠山卓朗
人と人のつながりの中で,人は生きる意味を探している
4.付録/上村数洋氏活動の記録