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フレイル高齢者の関節可動域 ケアの指標としての活用

フレイル高齢者の関節可動域 ケアの指標としての活用
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筆頭著者 福田 卓民 沖田 実 (編集)

三輪書店

電子版ISBN

電子版発売日 2023年8月7日

ページ数 304

判型 A5

印刷版ISBN 978-4-89590-792-7

印刷版発行年月 2023年7月

DOI https://doi.org/10.18937/9784895907927

書籍・雑誌概要

作業療法士として、これだけは知っておきたい !
“日々の生活を時間差で示す重要なシグナル”である高齢者の関節可動域を4,000人以上のデータで解析し、ケアやリハビリテーションの効果を検証!

本書では、軽度~重度の虚弱状態にある高齢者をフレイルの欠損累積型モデルとそのスクリーニング尺度であるClinical Frailty Scaleを参考に《フレイル高齢者》と定義し、その「関節可動域」と「拘縮」を多面的に取り上げている。

「第1章 フレイル高齢者の関節可動域」では、関節可動域に対する考え方を述べ、フレイルや関節可動域制限の定義・病態を整理したうえでフレイル高齢者の関節可動域データを提示している。
「第2章 ケアと関節可動域」では、看護とリハビリテーション、そしてレクリエーションの視点から、具体的なケアのあり方と介助方法および余暇活動の必要性について概説している。
「第3章 リハビリテーションの実際と治療戦略」では、各病期におけるリハビリテーションの役割とそのエビデンスを紹介し、現状の課題と今後の展望を述べており、リハビリテーション専門職以外の職種にも参考になる。
「第4章 不活動に起因するその他の機能障害と対応策」では、関節可動域制限以外の機能障害について整理するとともに、対策の基本となる身体活動の意義や重要性を提示し、フレイル高齢者特有の5つの症状を取り上げ、関節可動域との関連性についても検討している。これまで症状別に対応されてきた機能障害であるが、今後は並行して発生・進行するものと認識を改め、その効果検証が不可欠であることを共有したい。
「第5章 活動的な高齢者であるための“大人の嗜み”」では、“心を動かし、身体を動かし、生活を活発化する”ことが、高齢者の身体活動を維持・向上させる方法であると述べている。
そして「第6章 終末期ケアの指標としての関節可動域」では、長年にわたりフレイル高齢者の関節可動域データを分析していくなかで、終末期の臨床を担う者としての思い記し、関節可動域を含む機能障害の研究・教育・臨床に対して提言した。

本書では、筆者らの施設で集積した4,000名を超えるフレイル高齢者の関節可動域データを示し、それが何を意味し今後にどう生かすべきなのかを問うている。フレイル高齢者の関節可動域制限は、「日々の生活を示したシグナル」でもあるため、身体機能を専門としない職種や立場であっても理解・認識されることが望まれる。本書はそのことを考えるきっかけとなる1冊である。

目次

第1章 フレイル高齢者の関節可動域
1.関節可動域が示すもの (福田卓民)
 Ⅰ.指標としての関節可動域
  関節可動域制限の問題 / 高齢者における関節可動域制限 / 活動状況を示す関節可動域
 Ⅱ.高齢者に対する関節可動域制限の予防策
  重篤な関節可動域制限の保有者 / ケアやリハビリテーションの基本的な役割
 Ⅲ.拘縮予防策を実施することの難しさ
  拘縮予防策を実践するためには / 拘縮予防策を継続するためには
 Ⅳ.シグナルとしての関節可動域制限
  最期まで残る障害 / 不活動に起因するほかの症状 / シグナルとしての関節可動域制限
2.フレイルとは (平瀬達哉)
 Ⅰ.定義
 Ⅱ.概念
  表現型モデルにおけるフレイル / 欠損累積モデルにおけるフレイル / 表現型モデルと欠損累積モデルにおけるフレイルの概念の相違点
 Ⅲ.Clinical Frailty Scale(CFS)
  CFSの活用方法
3.関節可動域制限とは (沖田 実)
 Ⅰ.関節可動域制限
  定義 / 分類 / 発生・進行要因
 Ⅱ.拘縮
  定義 / 分類 / 臨床像
 Ⅲ.拘縮の病態とメカニズム
  拘縮の発生・進行状況 / 拘縮の責任病巣 / 拘縮の病態 / 拘縮のメカニズム
4.フレイル高齢者の関節可動域 (吉際俊明・佐藤雄也)
 Ⅰ.フレイル高齢者の関節可動域の推移
  ケアやリハビリテーションの効果検証としての関節可動域 / 対象者の概要 / 調査対象とした関節可動域 / 集計ならびに分析方法 / 結果 / フレイル高齢者の関節可動域の特徴
 Ⅱ.フレイル高齢者の関節可動域に影響を及ぼす要因
  死亡退院直近の関節可動域 / 影響を及ぼす要因 / 亡くなるそのときまで継続することの重要性

第2章 ケアと関節可動域
1.ケアの役割 (桑田美代子・福田卓民)
 Ⅰ.緩和ケアとしての関節可動域の維持・拡大
 Ⅱ.日々繰り返し行われるケアこそ価値あるケア:多職種とともに創る
 Ⅲ.高齢者本人主体のケアを目指す
  日本老年医学会「ACP推進に関する提言」/ 高齢者本人を主体としたケア
 Ⅳ.関節可動域の維持・拡大を目指したケア管理
  多職種間で理念を共有する / 各職種の役割・機能を発揮させる / 情報の共有:事故防止 / スタッフ教育:リハビリテーション専門職の役割・機能を発揮させる / 実践方法の見える化:具体的に伝える / ケアの成果を見える化する / 家族教育
2.ケアの実際 (佐藤雄也)
 Ⅰ.フレイル高齢者に対するケアの意義
 Ⅱ.起居動作の介助方法
  ケアに入る前の原則 / 具体的な介助方法
 Ⅲ.日常生活の基本ケアに合わせて行う他動運動
  手指および手関節の他動運動 / 肘関節および肩関節の他動運動 / 股関節および膝関節の他動運動 / 足関節の他動運動 / 足指の他動運動
 Ⅳ.車いす使用時の応用
  リクライニング機能の使い方 / 身体を起こすことの効果 / 外出の効果 / 他者との接点
 Ⅴ.ケアの指標としての関節可動域
3.ケアとしての余暇活動 (小池和幸)
 Ⅰ.人間らしい生活
  生活の役割と生活時間(基礎生活,社会生活,余暇生活)/ ICFからみる余暇活動
 Ⅱ.元気に生きるための「ハレ」と「ケ」のサイクル
 Ⅲ.生きる目的としての「余暇活動」

第3章 リハビリテーションの実際と治療戦略
1.リハビリテーションの実際
 Ⅰ.急性期(呂 隆徳)
  急性期リハビリテーションとは / 急性期の対象者の状態 / 急性期リハビリテーションでのプログラムと効果検証 / 関節可動域制限に対する周囲の関心や取り組み/ 課題と展望
 Ⅱ.回復期(後藤 響)
  回復期リハビリテーションとは / 回復期の対象者の状態 / 回復期リハビリテーションでのプログラムと効果検証 / 関節可動域制限に対する周囲の関心や取り組み / 課題と展望
 Ⅲ.生活期(平瀬達哉)
  生活期リハビリテーションとは / 生活期の対象者の状態 / 生活期リハビリテーションでのプログラムと効果検証 / 関節可動域制限に対する周囲の関心や取り組み / 課題と展望
 Ⅳ.介護・終末期(齋藤ひかる)
  介護・終末期リハビリテョンとは / 介護・終末期の対象者の状態 / 介護・終末期リハビリテーションでのプログラムと効果検証 / 関節可動域制限に対する周囲の関心や取り組み / 課題と展望
2.メカニズムから紐解くリハビリテーション戦略
 Ⅰ.基礎研究のエビデンス(本田祐一郎)
  筋収縮に対するリハビリテーション戦略 / 拘縮に対するリハビリテーション戦略 / 新規リハビリテーション戦略の開発に向けた基礎研究 / 課題と展望
 Ⅱ.臨床のエビデンス(片岡英樹)
  臨床実践 / 臨床効果 / 新規介入戦略の臨床応用とその効果 / 課題と展望

第4章 不活動に起因するその他の機能障害と対応策
1.不活動に起因する機能障害 (坂本淳哉)
 Ⅰ.不活動と廃用症候群
 Ⅱ.身体局所に発生する廃用症候群
  褥瘡 / 筋萎縮(筋力低下) / 骨萎縮(骨粗鬆症)
 Ⅲ.全身に発生する廃用症候群
  循環器系の廃用症候群 / 呼吸器系の廃用症候群 / 消化器系の廃用症候群 / 泌尿器系の廃用症候群 / 神経系の廃用症候群
 Ⅳ.関節可動域制限と廃用症候群の関連性
  身体局所の廃用症候群による悪循環 / 身体局所および全身性の廃用症候群による悪循環
2.不活動に伴うフレイル高齢者特有の症状
 Ⅰ.フレイル高齢者の身体活動(渡辺浩司)
  身体活動とは / 高齢者の身体活動の量・範囲 / 療養病床におけるフレイル高齢者の身体活動 / フレイル高齢者の身体活動を高めるために
 Ⅱ.フレイル高齢者特有の症状
  褥瘡(玉井奈緒)/ 疼痛(山下由香)/ 脊柱変形(小倉正基)/ 足のトラブル(髙野裕子)/ 顎口腔機能障害(大西智和)
3.関節可動域とほかの機能障害の関連 (田中将人)
 Ⅰ.不活動が引き起こす機能障害に関する調査
  対象
 Ⅱ.関節可動域とほかの機能障害
  褥瘡と関節可動域 / 痛みと関節可動域 / 脊柱変形と関節可動域 / 認知機能と関節可動域
 Ⅲ.機能障害の対応策のポイント

第5章 活動的な高齢者であるための“大人の嗜み”
1.大人の余暇活動とレクリエーション (小池和幸)
 Ⅰ.余暇活動の必要性
  従来のレクリエーション / 余暇活動やレクリエーション活動の変化
Ⅱ.大人の嗜み
  大人の嗜みとは / 大人が嗜むレクリエーション活動とは / 福祉レクリエーション支援の2つの方向性~どっちの“大人の嗜み”へのアプローチですか? / 生活のレクリエーション化~日常おきまりの生活を楽しむ! / レクリエーションの生活化~生活の一部として活動や体験を楽しむ!
2.〝大人の嗜み〟の見つけ方と活動の支援 (小池和幸)
 Ⅰ.心が動く「楽しさ」の所在
  ナッシュのレジャー・レクリエーションの段階 / 遊びの分類 / “楽しさ”と“楽しみ” / 簡単すぎても難しすぎても楽しくない~フロー体験
 Ⅱ.“楽しみ”を導く活動の分析と選択
  「身体的」「知的」「情緒的」「社会的」4つの活動分析から導く“楽しさ” / 活動と人間交流モード,人との相互作用と“楽しさ”~人はどのような交流が好きか?
 Ⅲ.“楽しみ”へ導くための背中の押し方
  誰もが100%のモチベーションで活動していない! / 高齢者を動かす“大人の嗜み”としての活動提供

第6章 終末期ケアの指標としての関節可動域
1.終末期の臨床における関節可動域の捉え方(吉際俊明)
 Ⅰ.終末期の臨床における問題点
  フレイル高齢者の関節可動域制限 / 終末期の臨床における悩み / 終末期リハビリテーションの必要性
 Ⅱ.終末期におけるフレイル高齢者の状況
  フレイル高齢者の身体活動 / フレイル高齢者の関節可動域制限の実態
 Ⅲ.終末期における拘縮対策の実例
  青梅慶友病院の概要 / 目的の共有 / 対象とする関節と許容域の設定 /具体的な対応 / 結果の共有 / 効果検証
 Ⅳ.終末期におけるリハビリテーション専門職の役割
  身体機能の見極めとケアの設定 / 定期評価とフィードバック / 正しい関節運動の伝達 / 環境設定
 Ⅴ.関節可動域に焦点をあてることの意義
2.関節可動域制限を含む機能障害の考え方:研究・教育・臨床への提言(沖田 実)
 Ⅰ.研究題材としての機能障害
  拘縮の基礎研究を始めたきっかけ / 拘縮の基礎研究の実践 / 拘縮の基礎研究の成果からみえてきたこと
 Ⅱ.教育の必要性
  医学における治療体系/ 理学療法や作業療法における治療体系 / 教育システムの整備 / 教育の実践~学生に伝えたいこと
 Ⅲ.臨床へのフィードバック
  これまでの臨床実践の課題 /メカニズムを基盤とした臨床実践~臨床へのメッセージ

付 録(吉際俊明)
● 4関節の入院時から36ヵ月までの推移
● 性別の影響に関する統計結果
● 年齢区分の影響に関する統計結果
● 基礎疾患区分の影響に関する統計結果
● 障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の影響に関する統計結果
● 認知症高齢者の日常生活自立度(認知症度)の影響に関する統計結果

索引

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