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「卓越したジェネラリスト診療」入門
複雑困難な時代を生き抜く臨床医のメソッド
筆頭著者 藤沼 康樹 (著)
医学書院
電子版ISBN 978-4-260-65354-1
電子版発売日 2024年6月10日
ページ数 292
判型 A5
印刷版ISBN 978-4-260-05354-9
印刷版発行年月 2024年5月
書籍・雑誌概要
ガイドラインじゃ解決できぬ臨床課題に答えるエキスパートジェネラリストのメソッド集
マルチモビディティ、下降期慢性疾患、複雑困難事例、心理・社会的問題、未分化健康問題…。現代の臨床医は外来で、ガイドラインや医学的知識だけでは太刀打ちできない、さまざまな患者・家族の健康問題に直面する。そんな時、医師として、どう考え何ができるか? 日本のプライマリ・ケアと家庭医療学を牽引してきた著者が、そのメソッドを開示し“新たな医師像”を提示した。藤沼康樹氏の現時点での集大成、待望の単著。
目次
はじめに
プライマリ・ケア外来の一般要件
プライマリ・ケア外来の「独自性」
「卓越したジェネラリスト診療(EGP)」とは
第I章 プライマリ・ケア外来の一般要件
1 「臨床診断」の技芸
病院の一般外来とは異なる“診断戦略”が必要なワケ
危険な疾患を除外する方法
プライマリ・ケア独自の「事前確率の見積もり」
プライマリ・ケアに多い「診断の遅れ」
「診断エラー」を防ぐ方法
12の診断エラー経験と12のパール
重大疾患を除外したあとは
医学的診断がつかない場合
2 「外来診療」を構造化する
時間をかければいいわけではない
病棟・救急外来との違い
「かかりつけ医」機能をもつ外来とは
まず「アジェンダ」をつくる
アジェンダを「1患者10分」で達成する10の手順
「患者中心の医療の方法」による時短
「家庭医療」ができる外来をデザインする
「半予約制」のススメ
3 「家族」を診る方法
なぜ「家族(family)」を診るか
診療ツールとしての「家族図」
現代の「家族問題」と家族図
「家族療法」の可能性
家族を「構造的」に診るためのポイント
4 外来診療におけるクリニカル・スキルズ
「身体診察」の4つの意義
身体診察に関する私的パール集
「子ども」のかぜ
「大人」のかぜ
「高齢者」のかぜ
「禁煙外来」を成功させる4つの認識
「私はこれでタバコをやめました」
5 プライマリ・ケアにおける「治療学」
Doctor as Drug──診断=治療である
プライマリ・ケアにおける8つの「治療法」
「処方」の原則
私のパーソナルドラッグ40
リアシュアランス:「安心」を導く7つのフレーズ
“クローズド・クエスチョン”から始めよ
シンプルな精神療法(カウンセリング)のエッセンス
“医学的には必要ない点滴”の治療的意義
診療所における注射
小外科処置をどこまでやるか
物理療法の“心理的”効果
鍼灸・マッサージの意外な可能性
第II章 卓越したジェネラリスト診療の実践
「ジェネラリスト」の専門性とは何か?
1 なぜ「卓越した」ジェネラリスト診療か
「問題が何かわからない(未分化健康問題)」という問題
従来型の診断・治療のパラダイムが使えない
「意識変容」に不可欠なunlearning
時代が求める“新たな医師像”
2 医学的治療が問題解決にならない場合:「病い」へのアプローチ
「病い」にアプローチする4つの道筋
①FIFE:「共感」ではなく、患者にとっての意味を知る
F:feelings(感情)
I:ideas(概念)
F:functions(生活機能)
E:expectations(医療への期待)
②ライフヒストリーの聴取:治療を拒否する患者へのアプローチ
ライフヒストリー聴取の実際
ライフヒストリーを引き出す3つのトリガー質問
③健康生成論に基づく診療:患者の“強み”に注目する
疾患ではなく「健康」に直接アプローチする臨床的方法
④解釈学的医療:患者の「主体/自己」を対象とする
ジェネラリズムは「身体化された主体」を対象とする
患者の「主体/自己」を支える「一貫性」(ルーチン)と「エンゲージメント」
3 「患者中心」の診断推論
一般的な診断推論(仮説演繹型)との違い
“無限”の問題空間を扱う
「帰納的採集」と「トリガー・ルーチン」
患者と協同で行う「アブダクション・アプローチ」
“演繹的に考える癖”から脱する方法
「患者中心のプロブレムリスト」をどうつくるか?
4 「複雑困難事例」へのアプローチ
あなたのストレス・陰性感情も徴候です
①“複雑な状態”を表現する用語やコンセプトを使う
②患者の「creative capacity」を同定・援助する
③“インフォーマルなリソース”も使う(社会的処方)
④「チーム力の向上」もアウトカムと考える
5 「マルチモビディティ」へのアプローチ
コモビディティとは違う
マルチモビディティはなぜ問題か?
ためしにガイドラインどおりにやってみると…
「治療負担」のマネジメントを起点に
複雑な介入法とシンプルなポイント
マルチモビディティへの介入における7つのパール
6 「下降期慢性疾患」へのアプローチ
“下降期”でもできることはある
下降期慢性疾患の5つの構造的特徴
下降期慢性疾患へのアプローチの実践例
7 診察室から地域への“水路”としての「社会的処方」
「孤独」や「寂しさ」につける薬はないのか?
患者の“居場所”と“出番”をつくる「テーマ・コミュニティ」
診察室とテーマ・コミュニティをつなぐ「リンク・ワーカー」
「患者」としてみることと「生活者」としてみることの“中間”を行く
日本における「社会的処方」の課題
社会的処方の理論的根拠となる「社会関係資本」
8 プライマリ・ケアにおける「回復」の構造
それは本当に「治療効果」か?
「回復」を構成する6つの性質
回復が生じやすい環境「ヒーリング・ランドスケープ」
回復に関わる「患者」の4つの側面
第III章 卓越性を支える「チーム」と「教育」
1 地域医療における「チームワーク」
個別に仕事を行う時代は終わった
「統合ケア=多職種協働」ではない
チームワークの「促進因子」と「阻害因子」
「阻害因子」としての医師
「医師誘発性困難事例」
介護(施設)vs看護(病院)
異文化感受性発達モデル
チーム内の「異文化≒多様性」を活用する方法
2 「振り返り(省察)」と実践をつなぐ方法
“きれいごと”では「振り返り」にならない
「振り返り」をする前に認識しておきたい4つのこと
「振り返り」をする時に意識しておきたい6つのこと
後悔から「省察」へ
たとえば「告知」の事前アドバイス
事後に「自分のこと」も振り返る
不確実性に向き合う「省察的実践家」
3 ジェネラリストの教育・生涯学習
「一般外来研修」での教え方の枠組み
「外来ケースカンファレンス」の方法
「病院」で使える家庭医療の教育コンテンツ
「病院」の複雑困難事例へのアドバイス
価値転倒をもたらす「レクチャー」の方法
“サブカル”も教材になる
価値観の幅を広げるトレーニング
「正解がないこと」を教えるための事例集
おわりに
これからのジェネラリスト診療
“コロナ禍”があぶり出したプライマリ・ケアの本質的役割
「気候変動」は健康問題だ
長い医師人生をどう生きるか?
新たな時代を肯定的に生き抜くための6つのアドバイス
最後に改めて「卓越したジェネラリスト診療」とは何か?
「卓越したジェネラリスト診療」への4つのステップ
索引