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医療の価値と価格
決定と説明の時代へ
筆頭著者 田倉 智之 (著)
医学書院
電子版ISBN 978-4-260-64352-8
電子版発売日 2021年7月19日
ページ数 276
判型 A5
印刷版ISBN 978-4-260-04352-6
印刷版発行年月 2021年6月
書籍・雑誌概要
医療制度を支える経済情勢が厳しさを増している現在、医療の「価値」や「価格」を正面から論じる必要がある。本書では、価値や価格を論じるのに必要な基礎知識を体系的に整理している。医療経済学をベースに医療の価値と価格を見える化し、価値に見合った社会的な負担を関係者に説明すること、そして、価値に関する議論や関係者の理解が進むことにより、わが国の医療の発展につながることを目指す。
目次
はじめに
序章 なぜ医療経済学を学ぶのか――医療の価値と価格の説明が求められる時代
1 医療/介護を取り巻く経済動向
2 解決策を模索する政策の流れ――現状と論点の把握
3 なぜ価値と価格に着目するのか
4 期待される(目指すべき)イメージは
5 提供する価値の評価と説明力の向上を目指して
第1章 医療を取り巻く社会経済の動向
A 医療にまつわる経済的な仕組み
1 経済基調をながめる
2 医療分野の資源配分(医療費用)
3 医療分野における財政負担構造
4 医療分野と経済活動のバランス
5 公的医療市場のモラルハザード
B 医療分野の経済成長への貢献
1 産業とは何か
2 医療産業の概要と特徴
3 成長戦略における医療産業の考え方
4 金融工学などの理論による市場価値の予測方法
5 再生医療分野が有する産業的な価値予測の事例
C 価値の共有が望まれる時代の到来
1 価格水準のあり方について検討が望まれる病院経営の領域
2 価格水準のあり方について検討が望まれる創薬事業の領域
3 社会の変遷から負担と受益のあり方について検討が不可欠
第2章 健康・生命の価値の考え方と表現
A 人間の行動を決める価値とは何か
1 価値について改めて考えてみる
2 価値の学際的な発展の歴史
3 使用価値と交換価値
4 使用価値――医療分野に応用するための整理
5 交換価値――医療分野に応用するための整理
6 医療分野において価値哲学を考えるための整理
7 価値に関する理論の医療分野への応用
B 医療の価値を説明する考え方とは
1 効用の概念
2 主観価値説の概要
3 限界効用理論の要点
4 価値に対する健康分野の特性
5 健康分野のアウトカム指標(健康関連QOL)――成果の考え方
6 医療分野における効用測定の要点
C 医療における経済価値の主な論点
1 費用対効果(パフォーマンス)による価値の検討
2 医療技術の費用対効果分析の概要
3 認知にかかわるバイアスの取り扱い(フレーミング効果)
4 人間や組織の非合理性の取り扱い(行動経済学)
5 医療分野における価値のとらえ方とその表現(まとめ)
第3章 医療市場の価格水準の成り立ち
A なぜ価格が必要なのか
1 価格の起源と役割を改めて考えてみる
2 価格はどのように成立するのかを考える
3 価格が変化をする理由について考える
4 総余剰と価格弾力性について
5 厚生経済学の概要について
6 ゲーム理論の概要について
7 価値と価格の関係を市場から整理する
B 価格の算出アプローチ
1 医療分野の価格検討の特徴と条件
2 医療費用(資源消費)の算定方法
3 コストによる価格設定の論点
4 診療成果(アウトカム)の算定方法
5 医療分野の品質と価格の関係整理
6 提供される診療に対する支払意思額
7 診療分野の技術難易度の算出方法
8 診療パフォーマンスの算出方法
C 医療における価格形成
1 準公的な医療市場の背景と特性
2 わが国の診療報酬制度のルーツ
3 医療保険制度の基本的フレーム
4 医療保険制度における価格設定
5 医薬品や医療機器の価格設定の概要
第4章 医療分野の価値と価格のケース
A 疾病予防の価値評価
1 疾病予防の価値評価の基本的な概念の整理
2 循環器疾患領域の疾病予防の価値評価のケース
3 糖尿病領域の疾病予防の価値評価のケース
4 介護予防的な介入の価値評価のケース
B 治療介入の価値評価
1 薬物療法系の価値評価にかかわるケース
2 治療機器系の価値評価にかかわるケース
3 希少疾患に対する医療革新などの価値評価にかかわるケース
C 医療システム関連の価値評価の例
1 検査・診断分野の価値評価の事例
2 アドヒアランスを明らかにし向上させる価値評価の事例
3 パレート最適(フロンティア曲線)による 価値検討の事例
4 行動経済学を応用した予防医療の価値検討の事例
第5章 医療の価値の議論と価格のあるべき姿
A わが国の医療・介護システムの存在意義
1 医療・介護システムの価値評価の考え方
2 医療・介護システムのマクロの価値評価
3 医療・介護システムのミクロの価値評価
4 医療・介護の成果を未来志向で考える
B 医療・介護分野の価値と価格にかかわる課題
1 効用を軸とした価値や価格の議論の系譜
2 現代経済学を背景とした価値と価格の課題と潮流――厚生経済の進展に向けた効用の個人間比較の可能性
3 社会医学を背景とした価値と価格の課題と潮流――医療・介護における価値の解釈方法
C 医療・介護分野の価格形成のあり方
1 医療・介護システムのパフォーマンス評価のあり方
2 医療・介護市場における財政と配分のあり方
3 医療・介護市場における価値と価格を論じる意義
4 健康関連の合理的な意思決定と交渉戦略の重要性
終章 医療に対する価値観を共有し価格水準を考えることの重要性
1 医療分野で価値や価格を論じる意義
2 医療分野の価値や価格のアプローチ
3 医療分野の価値や価格を論じる限界
4 本書のメッセージと将来への抱負
あとがき
索引