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看護サービスの経済・政策論 第2版
看護師の働き方を経済学から読み解く
筆頭著者 角田 由佳 (著)
医学書院
電子版ISBN 978-4-260-64279-8
電子版発売日 2020年10月12日
ページ数 232
判型 A5
印刷版ISBN 978-4-260-04279-6
印刷版発行年月 2020年9月
書籍・雑誌概要
看護師の働きや技能に見合った評価は十分になされているだろうか。看護サービスの特殊性、診療報酬制度など、経済学の視点から看護職の働く場を分析して、わかりやすく解説。よりよい看護・医療が提供されるためにも、看護師の働きが正当に評価されることは不可欠であり、その方向性を経済学の視点で描き出す。
目次
序章 看護師が経済学を学ぶということ―いままさに必要な「看護サービスの経済学」
A 経済学とは
B 経済学の視点,経営学の視点
1 ある看護管理者の経験談
2 経済学と経営学の視点の違い
3 資源の希少性:誰しも「選択」が必要だ
4 看護師の役割の重要性
C 看護と経済学が目指すこと:よりよい生活のための「看護サービスの経済学」
第I章 経済学からみた看護サービス
A サービスの特性と看護サービスの捉え方
1 サービスとは何か
2 看護サービスの捉え方
B 自由な市場取引を妨げる医療サービスの特殊性
1 市場のメカニズム
2 医療サービスの特殊性
C 政府はなぜ医療サービスの取引に関与するのか
1 情報の非対称性という特殊性への政策対応
2 不確実性と外部性,価値財という特殊性への政策対応
D 看護サービスの特殊性とは
1 看護の定義にみる特殊性
2 供給の実態にみる特殊性
まとめ:看護サービスの取引にも必要な政策対応
第II章 社会経済環境の変化と看護・医療サービス
A 看護・医療サービスの消費を支える財政基盤
1 経済情勢
2 国民医療費・介護費の動向
3 国民医療費・介護費の財源
B 看護・医療サービスの消費はどのくらいの規模か
1 人口の高齢化
2 看護・医療サービスの消費者の健康状態
C 看護・医療サービスの生産はどのくらいの規模か
1 医療施設数
2 病床数
3 介護保険施設数と定員・利用者数
D 看護サービスの生産と消費について
まとめ:看護サービスの必要性を伝える意義
第III章 看護の生産性と看護師の生産性
A 2つの生産性の存在
1 看護サービスと看護師のサービスの違い
2 看護サービスの生産性と看護師の生産性
B 看護師の生産性:判断する指標は何か
1 労働生産性の定義
2 看護師の労働生産性を上昇させる方法
3 看護師の労働生産性を判断するには:経営指標
C 看護サービスの生産性:判断する指標は何か
1 看護サービスの生産性の捉え方
2 看護サービスの生産性を判断するには:アウトカム指標
D 2つの生産性改善を目指さねばならない看護管理者
まとめ:生産性のマネジメントを難しくする看護の診療報酬
第IV章 診療報酬制度のしくみがもたらす影響I
看護師の技能評価を妨げるメカニズム
A 診療報酬制度はどのようなしくみになっているのか
1 日本における診療報酬の支払われ方
2 診療報酬点数表のしくみ
B 看護サービスの生産にかかわる診療報酬のしくみ
1 看護サービス生産の対価としての入院基本料の支払われ方
2 看護師の技能を規定しない診療報酬
C 看護師の技能を問わない診療報酬と利益を高める経営とは:
生産性マネジメントの難しさ
D 技能の高い看護師ほど賃金で評価されにくい
1 高い技能をもつ看護師の需要と賃金の関係
2 看護師の賃金の実際
3 賃金以外の労働条件,教育機会へのインパクト
E 診療報酬の加算は技能の高い看護師の評価につながるか
まとめ:乖離する労働生産性と技能評価
第V章 診療報酬制度のしくみがもたらす影響II
看護師が他職種業務を担うメカニズム
A なぜ看護師は他職種の業務を引き受けるのか
1 看護師の業務内容を問わない診療報酬と加算の効果
2 他職種の業務を担う理論的背景:利益を高める経営とは
B 多くの他職種業務に看護師が携わっている実態
1 病院開設者別にみた他職種業務の分担・移譲の実態
2 協働する看護補助業務と看護師が主として行う薬剤関連業務
C 看護師が薬剤関連業務を主に担うのはなぜか
1 他職種への業務移譲によって上昇する看護サービスの生産性
2 労働生産性を上げにくい病棟薬剤師
D 加算の取得状況からみた業務分担の違い
1 患者とかかわる業務:加算の効果はみえにくい
2 各種搬送業務:加算の効果がみえやすい
3 薬剤関連業務:加算を取得すれば業務分担・移譲が進む
4 薬剤師との業務分担・移譲に向けて
まとめ
第VI章 看護師の労働供給 無視できない結婚と出産・育児
A 労働供給とは
1 1人で生活する場合の労働時間の決定
2 家族と生活する場合の労働時間の決定
3 雇用主側から労働時間が指定されている場合
B 看護師の大半を占める女性の労働供給行動
1 夫の所得が就業に与えるインパクト
2 子どもの存在が就業に与えるインパクト
3 夫の所得や子どもの存在が労働時間に与えるインパクト
C 看護師はどのような労働供給行動をとるのか
1 従来の研究にみる看護師の労働供給行動
2 日本における看護師の労働供給行動
まとめ
第VII章 看護師の労働需要と市場構造 生産性に見合わない賃金と労働力不足
A 労働需要とは
1 看護サービスの生産と看護師の労働力
2 看護師のもつ生産性と労働需要
B 雇用主による独占的な労働市場の形成
1 市場全体からみた看護師の労働供給
2 看護師の労働力が安く買い叩かれる需要独占市場
3 なぜ需要独占市場が形成されるのか
C 看護師にみられるさまざまな労働力不足
1 ニーズに対する労働力不足
2 静(態)的な労働力不足
3 動(態)的な労働力不足
4 需要独占構造下で雇用主が訴える労働力不足
D 労働力不足の解消に向けた政策の展開とその影響
1 労働力不足問題の表面化と対応策
2 労働力不足に対する各種政策手段のもつ影響
3 労働市場の需要独占構造を改善するには
まとめ
第VIII章 賃金・労働条件の格差と人的資本論
A 看護師間でどのように格差が生じているか
1 勤務する施設の規模からみる賃金格差
2 病院間にみる賃金格差
3 介護保険関連分野にみる賃金格差
4 賃金以外の労働条件にもみられる格差
B 賃金格差を説明する人的資本論
1 労働者の生産性に影響する「人的投資」
2 一般的技能への投資と賃金の関係
3 企業特殊的技能への投資と賃金の関係
C 人的資本論から看護師の賃金格差は説明できるか
1 学校教育にかかる費用と賃金との関係
2 職場での教育にかかる費用と賃金との関係
まとめ:看護師の特殊的技能への賃金評価と費用負担
第IX章 看護師間の賃金格差を生み出すメカニズム
A 賃金格差を生む労働市場の二重構造
1 一般の労働者にみられる賃金格差
2 第1次労働市場と第2次労働市場で異なる賃金決定メカニズム
B 看護師の労働市場も二重構造が成立しているのか
1 持続して観察される看護師の賃金格差
2 関連養成機関をもつか否かで分断される市場
3 二重構造仮説の検証方法
4 二重構造の成立を示す検証結果
C 賃金格差を生む職務価値の差異
1 職務の価値をどう評価するか
2 看護師間に職務価値の差はあるか
まとめ
第X章 看護師のワーク・ライフ・バランスと生産性
A 看護師の就業状況
1 看護師の就業動向
2 勤務先別にみた看護師数の推移
B 一般企業と比較した看護師の労働環境
C 看護師のワーク・ライフ・バランス施策の実施状況
1 ワーク・ライフ・バランスが実現する社会とは
2 看護職のワーク・ライフ・バランスへの取り組み
D ワーク・ライフ・バランス施策と看護師の労働生産性
1 WLB施策の導入で減らせる費用,増える費用:技能養成に着目して
2 労働生産性低下の可能性:看護管理者に必要となる冷静な判断
まとめ:看護サービスの生産性を高める視点との両立
第?章 よりよい看護を消費者のもとへ届けるために
看護師の技能評価との両立に向けて
A 生産性の狭間に立つ管理者,立たずに済む管理者
B 介護保険制度のもとでの看護サービス:両立する生産性の向上
1 介護報酬のしくみと看護サービスの生産
2 消費者獲得のために必要となる品質競争
C キーパーソンとしてのケアマネジャー:役割の発揮を難しくする現状
1 ケアマネジメントの難しさ
2 看護師資格をもつケアマネジャーの少なさ:利益を高める経営とは
D みんなのよりよい生活のために:情報発信の必要性
あとがき
索引